(interview:Kazutaka Ebe/photo:KaeruCamera)
新しい歴史の1ページ
ーーかつては東京大学にもマンドリンクラブがあったと思うんですが、なにかご存知ですか?丸山:全く知りませんでした。東大にマンドリンのサークルが「いま」存在しないという状況を何とか打開しようとして立ち上げることに夢中だったので、かつての歴史を掘り起こしたことは一度もありませんでした。 なので、良くいえば「伝統」、悪く言えば「しがらみ」にとらわれない自由なスタイルであることが私たちの持ち味でした。今後はサークルが年齢を重ねるにつれて変わっていくかもしれませんが。
渡辺:おそらく、かつて存在したのだろう、という推測程度ですね。今回の演奏会のアンケートで、「かつてあったんだよ」と教えていただいて、「あぁ、やっぱりか」という感じです。ただ、ここしばらくは無かったというのは、楽器店の店員さんとか、他の楽団の奏者の方の話で知ってました。
ーーなにか伝統との関係性というような意識はありますか?
渡辺:少なくとも僕は、これっぽっちも意識していないです。あくまでこの楽団は、設立4年目の、若い楽団。 毎年毎年、その年のメンバーが方向性を決めて活動する楽団です。だから、去年までは文化祭中心の活動だったという事実ですら、今年の演奏会開催をためらう理由にはなりませんでしたし。
来年はどんな楽団になっているか、再来年はどうか・・・僕の希望こそあれ、見当も付きません。まして、かつて存在したかどうかすらわからない先代のことは、気にかけたことはないです。ただ、今後二度と、「第1回演奏会」が開催されることのないよう、この楽団は続いて欲しい、とは思います。
ーーなるほど! ところでさきほども少し触れたクラシック音楽のバイオリン、やバイオリンオケとの違い、かなわないな、と思うのはどういう点ですか?
渡辺:フレットがある時点で、バイオリンのような、気分の良い音の一致はありえないですし。そういう風に、やはりマンドリンオケというのは、単に同じクラシックを演奏していれば、バイオリンオケには届かない。
ただ、そのぶんマンドリンオケは親しみやすい存在ではないかと思うのです。楽器は弾きやすい。音色は日本人好み。クラシックだけでなく何を弾いても、アマチュア楽団なら多少は許されます。
だから、「バイオリンオケと比較」というよりは、「共通点もありながら別の存在」というのでも良いのではないかと思います。
僕はバイオリンオケに所属することはおろか、バイオリンを演奏したことすらないので、距離を感じるには相手を知らなすぎる、というのも否めませんが。もっともっとマンドリンがメジャーな楽器になれば、音楽を(奏者として)楽しむにはもってこいの、バイオリンとは違ったあり方の楽器になれるものだと思っています。
あくまで個人的な思いなのですが。
丸山:私が思うのは、なんといっても楽器としての知名度の低さですね。初対面の人に「マンドリンをやっています」と言っても、知ってる人はせいぜい1割。打楽器のマリンバと勘違いされることもしばしばです(笑)。
同じ弦楽器であり、オーケストラからアンサンブルまで形態としてはバイオリンと全く変わらない幅広さを持ちながら、一般の方々にはあまり知られていない。これは非常に残念なことです。しかし、知名度が低いというのはただ単に「知られていない(=音色を聴いたことがない)」だけであって、「評価されていない」とは私は決して思っていません。事実、文化祭でマンドリンを初めて聴いた人の多くから好評をいただいています。
なので、マンドリンとバイオリンオケの距離感はマンドリン奏者1人1人による普及のための努力のよって確実に埋めていけると思っています。
(続きます)
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