ギターの時間|gtnjkn

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マンドリン演奏会報告

マンドリニストたちが込めた祈りと決意

「マンドリニストの集い
〜愛、希望、思いやり、助け合い〜」

2011年4月23日(土)スタジオ ヴィルトゥオージ(東京・新大久保)/撮影:kaerucamera

4月23日、東北は春爛漫の季節、関東在住のマンドリン演奏家有志による東日本大震災チャリティー公演「マンドリニストの集い」が東京・新大久保のスタジオ・ヴィルトゥオージで行われた。趣旨に賛同して出演したのは、青山 忠 ・ 青山 涼 ・ 桜井至誠 ・ 竹間久枝・壺井一歩 ・ 堀 雅貴 ・ 桝川千明 ・ 丸本大悟 ・ 望月 豪・マンドリン四重奏団クアドリフォーリオ。ステージでは最後に「マンドリニストの集いアンサンブル」として全員合奏による演奏が行われた。

【第1部】
春がきたによる変奏曲(中野二郎)/竹間久枝
光のダンス(加賀城浩光)/桝川千明
キラキラ星変奏曲(Denis)/竹間久枝・桝川千明
映画「ポカホンタス」より Colors Of The Wind(Menken)/青山 忠・青山 涼・武藤理恵(ピアノ)
見上げてごらん 夜の星を(いずみたく)/同上
Yesterday on Bach(マッカートニー・J.S.バッハ)/マンドリン四重奏団クアドリフォーリオ
メヌエットト長調(J.S.バッハ)/同上
早春賦(中田 章)/同上

【第2部】
時代(中島みゆき・桜井至誠)/桜井至誠(マンドリン)
If We Hold On Together(Horner・Jennings/桜井至誠)/桜井至誠(マンドリン)・中塚 慧(ギター)
AZZURRO for Mandolin solo(丸本大悟)/丸本大悟(マンドリン)
Kedma(Avital):望月 豪(マンドリン)
ミュージカル「Evening Primrose」より Take Me To The World(Sondheim)/堀 雅貴(マンドロンチェロ)・浜田佳由里(ピアノ)
水の旅路(堀 雅貴)/高橋邦明(マンドリン)・堀 雅貴(マンドロンチェロ)・浜田佳由里(ピアノ)
上を向いて歩こう(中村八大/壺井一歩)/壺井一歩(指揮)・マンドリニストの集いアンサンブル

【協賛】
(株)イケガク
(有)絃楽器のイグチ
山本ミュージック・コーナー
ロッコーマン(株)
(株)SIE
【協力】
奏でる!マンドリン
ギターの時間
【マンドリニストの集いウェブサイト】
http://quadrifoglio.michikusa.jp/gathering/20110423.html

 プログラムは一人、または1ユニットあたり、ステージの入りハケ時間を含め7~8分程度を想定して組まれたようで、演奏曲は1曲から3曲。奏者は入魂の1曲で役割を果たさなければならない。選曲は難しかったと思うが、それぞれのステージはたいへん印象深く、またトータルに音の記憶を辿ると起承転結も見事で、このチャリティーという企画にそぐわない言葉だが、宝石箱の中を覗いたようなきらめきに満ちていた。出演者と主催側との相談もあったと思う。しかしなにより出演者に任されていたところが大きいと思う。

 どの曲もけっして応援ソングではない。感傷的な気分を誘ったり、癒しの音楽でもない。

▲後列左から:壺井一歩 ・望月 豪・ 桜井至誠 ・丸本大悟 ・青山 忠 ・ 青山 涼 ・ 堀 雅貴/前列左から:小林 薫(クアドリフォーリオ)・青山志緒里(クアドリフォーリオ)・竹間久枝・ 桝川千明 ・ 岡崎 舞(クアドリフォーリオ)・林 真衣(クアドリフォーリオ)

 シンプルなメロディーをマンドリン奏法を駆使して聴かせる変奏があった。やすらげるメロディーがあった。バッハの普遍とポップスを重ねる挑戦もあった。力強い言葉を秘めた美しいメロディーがあった。歴史を俯瞰し未来を投影しようとする現代の作曲家による現代の響き、作曲者自らの手による演奏、ひとつは水を描き、ひとつは“青”を描いたオリジナル。前者は時の流れを、後者は海、そして地球を連想させた。そして、このコンサートのために編曲された作品。どの曲にもマンドリンという楽器でしか聴けない空間が編まれながら際立つ説得力を感じた。それは、会場にいた一人ひとリがそれぞれに感じる話だ。が、3/11の大震災以降日本人としてどのように生きていくか? この課題に向かう覚悟を教えられた気がする。テレビで叫ばれる“ひとつになろう!”というスローガンの話ではない。目指す方向はひとつだが、方法はいろいろ。一人ひとりがしっかり考えて生きていく、ということではないだろうか。
 音楽は音楽でしかない。しかしマンドリニストたちの演奏は、このイベント全体を通して、言葉では伝えにくい多様なメッセージを伝えていたと思う。音楽の力だ。

 なお、このコンサートは企画、出演、すべてボランティアで行われ、全収益と募った義援金を日本赤十字を通して復興支援の基金に充てられた。(江部一孝)

 

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