明治高校マンドリン部OB孝友会オーケストラが第7回定期演奏会を行った。このオケは、その名の通り明治高校マンドリン部OBたちによって結成されたオーケストラだ。定演は2004年9月が第1回。以来毎年着実に成果を披露している。孝友会の名前が示す通り、作曲家であるとともに、クボタフィロ・マンドリーネン・オーケストラを組織し指導に当たっている久保田孝氏の教え子達でもある。
ということは、久保田孝氏が指導するいくつかの学校のクラブ・オーケストラの社会人団体版、という言い方もできそうだが、音楽の志向や運営はまったく独自に行っており、久保田氏はいわば常任指揮者という位置づけにあたると思う。
以前、久保田さんに、自身が指導する各学校のオケとクボタフィロの違い、個性について伺ったことがある。まだ、いくつものオーケストラ体験をしていない時期のことだった。それによれば、それぞれ学生としての熟練度や人数楽器の違いなどによって、表情は多彩。それぞれに個性がありおもしろい、といったことであったと思う。
世界の名管弦楽オーケストラは、ホームとするホール、またそれぞれを指揮する個性豊かな名指揮者の手により、同じ作品でも多彩でカラフルな音楽を聴かせてきた歴史がある。そのことと単純に比べようとは思わないが、同じ指揮者によれば、あるていど音楽の方向も似てくるのではないか? と思っていた。
が、それはいらぬ心配だった。クボタフィロとこの孝友会オーケストラはずいぶん違う。
各パートのアンサンブルが一糸乱れないことによる美しさは、なかなか味わえるものではないと思った。この公演の後、10月10日大阪国際マンドリンフェスティバルにも彼らは出演した。そこでも演じたアンコール「ルスランとリュドミーラ」のパッセージなど、このうえなく爽快だ。昨年もじつは朔太郎音楽祭でこのオーケストラを聴いている。が、印象はかなり違う。テクニカルなことだけで音楽は活き活きとはして来ない。表現には技術とは別に魂がこもらないことには、ひとは動かせない。感動はない。でも、どの次元でそれを両立するか、どのくらいの比率でバランスさせるか。マンドリン音楽の可能性とおもしろさはまだまだ未開の領域があると確信させる演奏会だった。
なお、彼らの動画を部分的に紹介したく準備中。お楽しみに。