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マンドリン演奏会報告 演奏会報告

早稲田大学マンドリン楽部 第187回定期公演 迫真のロマン派ステージ!

 2011年12月16日東京・品川キュリアンで行われた早稲田大学マンドリン楽部(WMG)の公演は、2013年に100周年を迎える伝統あるクラブの公演らしさに溢れていた。以下、個人的な感想強めだけど公演をレポート。

 二部構成によるプログラム。前半を3年生小川亜夕美さん、後半は4年生渡辺佳奈さんが指揮。昨年末第185回を観覧したときも感じたことだが、WMGはある一定の様式美を持っていると思う。それが爽快だ。個々人、全体の演奏水準はもちろんだが、求める音楽性、目標とする表現の狙いも明確に聴こえる。代が変わってもそういう完成度を本番で発揮している。部員それぞれ、また指導にあたっている方それぞれに、さらに理想はあるだろう。けれど、それが本番に向けて総合力として“今年も”発揮されている、と思わせる。「いやそうではない」という指摘が仮にあったとしても、しかし、本番でここまでできてしまう底力は、やっぱりすごい。本番で力を出すというのは、なにもこのオケに限ったことではないはずだが。

 もちろん本番を午後または夜に控え、これまで時間をかけて完成度を高めてきた最後のリハーサルなのだからそれは当然かもしれない。そしてそれはどのオーケストラにも言えることでも起こる本番マジックだと思う。

 この公演の2ヶ月前、10月には、OBで構成する稲友会マンドリンクラブと早稲田大学マンドリン楽部共催で「西条八十生誕120周年記念演奏会」が、大隈大講堂で行われたが、この本番で醸成される爽快感は、じつはこのときにも感じた。音楽の放物線を、体全体を使って描くようなダイナミックなイメージを連想させる。が、同時に指先は繊細に空気とのふれあいを感じながら加減していく。この西条八十公演のステージメンバーは年齢層も厚く、というか幅広く、そうした統一感は学生オケとは異なり難しさもあったはず。にもかかわらず同じ印象を持った。
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 ともかく学生オケであるWMG、マンドリン歴は数年に満たない人もいるはずのこのオケには、また独特の艶やかさを感じる。ホールがよかった? ということはホールの選択が適切? 楽器演奏の指導?

 最近の取材では、リハーサルのときビデオを抱えながら、時に、ステージすぐ下やオケの後方、第一マンドリン始め、各パートの脇に入んで収録させていただくこともある。この映像を、本番客席からの画像にカットインして動画を編集し仕上げているが、このとき聴こえるのは直近の楽器の音だ。これが、たまらない。みないい音を鳴らしているのだ。いやメンバーにすれば邪魔くさいことだろう、すみません。でもそのリアルなパートの「個」の音と全体が混ざり、あちらこちらでそれぞれに異なるバランスの場が出現している。それをナマで聴かせてもらっているわけだが、このそれぞれの現場の音が、よい。この要因の一つはオケの楽器配分、構成によるところが大きいのではないかと思う。音響的なバランスだ。これを要求する「編曲」も優れているということだろう。もちろん指揮によるところも大きいはず。タイスも、シベリウスもそのバランスの上で流れるメロディーは浪々と美しい。

 じつは今回の動画、ステレオのライン出力を受けておりステレオ録音である。が、ダビング中セッティングのミスでモノラルで編集を進めた。が、そのモノラルで聴き慣れていても、物足りなさがない。それよりもレコード時代のモノラルによるオーケストラ録音やFM放送初期のオケのバランスに近い音像を感じることができていると思う。これは生音の音響的なバランスが優れているからこそであるはずなのだ。

 オケ自体のバランス、そして動画ではこの音響をセットしたスタッフのセンスも重要だ。さらに様々な要素が絡んでいるから、ひとつの答えに簡単には集約できない。しかし、ぜひ未体験の人には聴かせたくなるオーケストラだ。メンバー、関係者にはきちんとした録音によるCD入手の機会があると聞く。ぜひCDメディアでの試聴もお勧めする。レスピーギも、そしてリムスキー・コルサコフもより弦楽オケの質感とは一線を画すマンドリンオーケストラならではのカラフルな風合いを作り出している。
【プログラム】
第1部
紺碧の空 作曲:古関裕而 編曲/赤城淳
スラヴ舞曲第1番 作曲:ドヴォルザーク/編曲:赤城淳
タイスの瞑想曲 作曲:マスネ/編曲:赤城淳
シベリア狂詩曲 作曲:イワノフ/編曲/歸山榮治

第2部
序曲「フィンガルの洞窟」 作曲:メンデルスゾーン/編曲:赤城淳
リュートのための古風な舞曲とアリア第3組曲より イタリアーナ・シチリアーナ 作曲:レスピーギ/編曲:赤城淳
スペイン奇想曲 作曲:リムスキー・コルサコフ/編曲:1・2・3楽章 伊藤敏明 4・5楽章 進藤知哉

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