岩永善信ギターリサイタル。この人だけのギター美学

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 11月25日東京・浜離宮朝日ホールで、岩永善信ギターリサイタルが行われた。大阪フェニックスホール、名古屋の宗次ホールに続く東京公演。開場は満席である。今回は愛器ロマニリョスではなく、トビアス・ブラウンで登場。10弦ギターによる豊穣な響きと、岩永氏自身の手になる編曲作品に、今回も圧倒された。(撮影:かえるカメラ)

 前半がバッハとジュリアーニ。そして後半は真骨頂、ロマン派の名曲を自身で編曲した作品。
 岩永さんのコンサートで奏されるバッハは、「ギター用の市販の譜面」を用いない。すべて鍵盤用に書かれたオリジナル楽譜を元に、オリジナルで編曲した楽譜で演奏される。ジュリアーニにしても同様だ(今回のバッハは、川潟誠氏と岩永善信氏の二人による共同編曲)。そしてロマン派作品。ピアノ曲や管弦楽曲として一般的に有名で、なじみある楽曲を、これもまた自身でアレンジする。作曲家の脳裏にあったはずの全ての音を解体し、ギタリストである岩永善信自身が、10弦ギターを想定して再構築していくのだ。このとき、おそらく自身の中には、「演奏できるかどうか」は前提にない。実際に指板の上で押弦できるかどうかだけの確認だろう。最近全幅の信頼を置いている川潟誠氏の作業もおそらく同様だ。そして次に、今度は演奏家・岩永善信は、それらの楽譜と格闘を始める。想像を越えるエネルギーが必要な作業ではないだろうか。

 表現したい音のイメージ、それをイメージ通りに演奏すること。自身の中で鳴っている音をいかにしてホールに響かせるか。
 ステージでは、いつもにこやかに登場し、時に軽やかに時に深く音をつむぎ、ちりばめ、響かせる。華麗な演奏と笑顔の影に、とてつもない大チャレンジが毎回行われているのだ。その音の陰影は深い。もちろん聴こえる音は輝き、華麗なテクニックが難曲であることなど微塵も感じさせない。

 終わってみれば、あっという間。聴き終えて、こちらも「はあー!」と息を止めて見て聴いていた瞬間があちらこちらにあった。演奏後、「今回はね、練習したんですよ!」と笑い飛ばしながら、いたずらっぽく話てくださったが、もう1回、いや、何度でも聴き返さないと、この人の音楽の全貌、そして細部はほんの一瞬のあやうい記憶の断片でしかない。しかしこのギタリスト、音楽家は、記録を残さない。CD発表やDVDの公開に対して毅然と距離を置いている。音楽が「その場」のアートであることに徹底してこだわっている。どこか19世紀的な頑固さといえばいいのだろうか? しかしそれがギターを愛し、ロマン派を愛する岩永善信なら、また機会を逃さずコンサートに足を運ぶしかない。それが、また無上の楽しみとなる。音楽の真理がそのあたりにありそうな気もする。岩永善信はそのことを確信している数少ない音楽家の一人なのかもしれない。

【演奏曲目】
無伴奏ヴァイオリンパルティータ第1番より(バッハ)
アンダンティーノ・ソステヌート&フォリアの主題による変奏曲op.45(ジュリアーニ)
動物の謝肉祭より(サン=サーンス)
子供の情景より(シューマン)
無伴奏ヴァイオリンのためのソナタOp.115より(プロコフィエフ)
アルルの女第2組曲より(ビゼー)

〈アンコール〉
アメリアの遺言(カタロニア民謡)
熊蜂(E.プジョール)
鳥の歌(カタロニア民謡)

【2012年コンサートの予定】
3月18日(日)岡山県玉野市コンサート(岡田音楽サロン
3月19日(月)香川県丸亀市コンサート(88ステージ
5月11日(金)鹿児島市コンサート(カテドラル・ザビエル教会
5月19日(土)新潟市コンサート(だいしホール
11月18日(日)愛知県名古屋市コンサート(宗次ホール
11月25日(日)東京都渋谷区コンサート(ハクジュホール

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