9月15日東京・飯田橋の嶋田ミュージックで、北島ひとみ・蓮見昭夫「哀愁のタンゴコンサート」が行われた。
蓮見の見事なテクニックによるギターの調べと、表情豊かな北島ひとみの歌声にたっぷり魅了されたひとときだった。
蓮見さんのギタースタイルは、クラシックギター、ジャズギターをベースにしており一言で言うと奔放。ポピュラー色の含まれる曲では、そこかしこにアドリブ的なフレーズが仕込まれる。カデンツァというには短いが、一瞬スケールアウトしそうなところもあって、ギター好きにはたまらない魅力を持っている。そんなギターが、伴奏にまわると、相手はじつに心地良さそうで、揺れるフレーズも呼吸がぴたりと合い、音楽の楽しさを伝える。
北島さんは、メキシコでスペイン語を学び、メキシコ、ペルー、ブラジル、合わせて約5年間中南米生活を送りながら、2000年秋よりアルゼンチンタンゴを歌い始めた。これまでにタンゴの名手たちとの伝説的なステージを重ねて来ているが、一方、蓮見さんのギター一本との組合わせによるライブも最近は積極的に行っている。
比較的コンパクトなホール、室内というくらいのスペースで、身近に息づかいも含めて聴く情感豊かなタンゴは、ああ、まさにタンゴとはこういうものだ、と思わせる。情念と哀愁。せつない想いを歌うタンゴは、ファドや演歌とともに、民衆の、というより人間の「生」を歌う。たとえば、ギター1本によるピアソラもかなり聴いてきた。個人的にピアソラを知ったのはギターソロによって、だった。が、ギターによるピアソラは洗練されすぎている。それは、魂を揺さぶるピアソラ楽団のライブを聴いた耳には、別物のように聴こえる。純度の高いピアソラもあっていい。しかし、魂に直接揺さぶりをかける音楽はギター1本では無理、というのが個人的な見解だ。その揺さぶりがこのデュオにはあった。
歌うタンゴ。いや、いいものですね!
ところで、会場となった嶋田ミュージックのこのホールは、こうした音楽のありかたに最適に思える。「場」を提供しているというよりも、そうした音楽のあり方を提案しているようだ。後援を主催する側にとって、じつは使用料もリーズナブルなのだ。ここでのイベントにはぜひ注目していきたい。
(文:エベカズタカ/撮影:かえるカメラ)
【演奏曲目】
ギターソロ
カミニート
誰も知らない私の悩み
最後のヒーロー
ギターソロ
想いの届く日
ノスタルヒアス
ギターソロ
アルフォンシーナと海
チキリン・デ・バチン
ギターソロ
アドロ
忘却
私はマリア
※セットリスト中ギターソロは日替わりのようです。そこもお楽しみ。
【哀愁のタンゴコンサート in 高知】
10月12日(金) 高知文化プラザかるぽーと(小ホール)
北島ひとみ(ボーカル) 蓮見昭夫(ギター)
開場18:30 開演19:00 料金2000円
問合せ・予約 かるぽーと3Fミュージアムショップ
080-883-5052
【蓮見昭夫オフィシャルサイト】
全国ツアー情報ほか
【嶋田ミュージック直近イベント】
佐古季暢子 ドイツマンドリンコンサート
2012年10月6日(土)
会場:嶋田ミュージック
開場:18時30分 開演:19時00分
料金:2,000(全席自由)
※東京公演はソロコンサートです。広島公演は10/4。
予約・問合せ:嶋田ミュージック 03-6272-9556
メール info@shimadamusic-mg.com
※メールで予約の場合、タイトルに「10月6日コンサート予約」、
本文に「代表者氏名・人数・電話番号」 を記入して送付。折り返し確認のメールが返信される。