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リベルテ第8回演奏会(11/23)2週前リハを取材レポート

 リベルテ・マンドリン・オーケストラは、望月豪により2003年3月に結成された団体。曲種/企画に合わせ様々な編成で演奏を行ってきており、通常「リベルテ・マンドリン・オーケストラ」(大編成)または「リベルテ・マンドリン・アンサンブル」(小編成/この場合指揮者を置かない)のどちらかで活動している。通称=リベルテ。11月23日(祝)東京・飯田橋トッパンホールでオーケストラによる演奏会を計画、今月に入り、リハーサルも熱を帯びてきた。(撮影:かえるカメラ)

 今回は、望月豪、またオーケストラメンバーとも近年交友を深めてきている若い世代の作曲家達による作、編曲作品集で、刺激的なプログラムを構成している。
 以下、個人的感想/期待を込めてプログラムを概観してみる。

 橋爪皓佐は、ブリュッセル音楽院学士課程を修了したギタリスト/作曲家。第6回大阪国際マンドリンフェスティバル&コンクール(作曲部門で開催)のファイナリストでもある。その時の作品は、”現代曲”のエッセンスをコラージュしたもので、個人的にはとても気に入った作品だった。留学先ではギタリストであると同時に作曲家であることの強みを活かした作品でコンサートを開催。この秋帰国、日本での活動が始まったばかり。最新活動のひとつは藤倉大氏作品「”Sparks” for guitar」の演奏。iTUNESやAmazon(右:ダウンロード販売)でも公開/販売開始された。試聴もできるし、ぜひ購入してみよう!100円!!

 望月自身が第5回大阪国際マンドリンフェスティバル&コンクール(2009)(マンドリン独奏部門で開催) 優勝者であり、その翌年つまり橋爪が参加したコンクールのときに、演奏者として参加。知遇を得ている。以来の交流から、今回の企画に発展したもののようだ。

 その橋爪が今回2作品を編曲。ひとつはドビュッシー「スコットランド風行進曲」。4手のためのピアノ連弾曲(1891)で、その後作者自身が管弦楽に編曲し1911年に出版された。「小組曲」や「6つの古代の墓碑銘」ほど演奏される機会は少ない気がするし、残されているCDも少ないのではないかな? と思っていたら、いろいろ演奏例はあるのだね。
 ある人のブログで「ドビュッシーといふよりもピエルネ風の分かりやすい作風。そこにヴォーン=ウィリアムズを掛け合わせたような不思議な魅力」という記述があった。「わかりやすい=演奏しやすい」ではないところが、またこの作品の魅力かもしれない。動画に一部収録させていただいているので、いろいろイメージしてみてほしい(間もなくこのページで公開予定)。
 同じく橋爪皓佐編曲によるドビュッシーの先生、フォーレの「エレジー」は、これはもうチェロの魅力満載の名曲。オケの合奏が楽しみだ。

 壺井一歩「抜忍アスタリスク」。大阪国際マンドリンフェスティバルの第1回目となる作曲コンクール(2008)で第1位を獲得した壺井の2010年作品。その年の同フェスティバルで望月豪独奏を伴うマンドリン・オーケストラ演奏(井上泰信/ArteMandolinistica)で披露された。
 壺井一歩の作風は、空間の描き方、ヴィヴィッドな時間感覚がたいへん美しい。このような形容は、ご本人は嫌うかもしれないが、病み付きになる側面を持っている。「沈黙と測りあえるほどに」音(音価も音響も)と同時に「間」(ま)を大切にした武満徹を連想しながらも、このビッグネームとは異なる視点を、その音楽に感じる。沈黙に耳をそばだてている人にしか作り出せない音楽。ちなみに、壺井最新作品のひとつ「Zapfinino」をギタリスト橋爪氏が、この9月ブリュッセルのコンサートで演奏したばかり。その動画が壺井氏ホームページで紹介されている
 1年以上の時間を経て、今回、鷹羽弘晃の客演指揮で、どのような沈黙と空間を描き出してくれるのか?

 その鷹羽弘晃は、桐朋学園大学作曲理論学科卒業で、既に輝かしい受賞歴を持つが、おそらく、平成20年(2008年)度NHK全国学校音楽コンクール中学校の部課題曲「手紙」(作詞・作曲アンジェラ・アキ)の編曲を担当したことと、翌平成21年(2009年)度も中学校の部課題曲「YELL」(作詞・作曲 水野良樹(いきものがかり))の編曲を担当したことで知られるようになったと思う。彼の名前を知らなくても彼の編曲した合唱で「手紙」を聴いた、という人がかなりいるはず。
 その当時に望月豪が鷹羽に委嘱した「水上の月」で望月は大阪国際で優勝した。この作品もまた、マンドリン独奏曲として強い光を放つ作品だと思うが、そうした様々に強く結ばれた縁によるひとと作品で、今回のプログラムが組まれているのだ。そして、今回その鷹羽弘晃に編曲依頼したのが「クープランの墓」。動画に収録している演奏は、他の作品もそうだが、まだまだ発展途上。短期間で、おそらくさらに表情は変貌するだろう。

 以上4作品に、世界的作曲家カーゲル(Mauricio Kagel、1931.12.24 – 2008.9.18)が加わっている。これまた、たいへんな聴きものだ。生前、最後まで”前衛作曲家”と呼ばれるにふさわしい、挑戦的な作品を発表し続けたひとで、そのカーゲルが唯一残したマンドリン作品が「Musi」だ。ジョン・ケージ、シュトックハウゼンの流れを汲む作家という位置づけと、かれの影響を受けたジョン・ゾーンがニューヨークのアンダーグランド・シーンの音楽とも結びついたりしてさらに現代、というより現在に至る音楽の流れをひとつ形作っていることを考えると、ラヴェル=ドビュッシー〜武満徹の円環が、マンドリンへつながっているような気がして、クラクラ、わくわくする。
 演奏曲順がこの通りになるとすれば、和声的に「抜忍アスタリスク」で調声のあやうい空間を楽しみつつ、さらにそこを飛び出し、マンドリンの音響的に膨張する宇宙を感じ、そのあと、ラヴェルへ回帰しつつ、新しいマンドリン体験を実感する、という構成になるということか・・・。

 わかっていてもおもしろいのが、すぐれたエンターテインメントでもある。望月豪は「あくまでクラシックの演奏家」であることへの執着をもっているように以前話していたが、クラシックでも「楽しめること」=エンターテインメントは重要だと思う。

 リベルテの若き挑戦がどのように展開するのか?(文:ebekaz/写真:かえるカメラ)

The 8th Concert
2011.11.23(水祝) 開場 13:30/開演 14:00
トッパンホール (飯田橋駅)
一般 2000円 / 学生 1000円 ※当日チャージ制(当日現地精算・予約不要)
客演指揮:鷹羽弘晃
【演奏曲目】     
ドビュッシー/橋爪皓佐「スコットランド風行進曲」
フォーレ/橋爪皓佐「エレジー」 ※チェロ独奏:丹羽あいり
壺井一歩 「抜忍アスタリスク」 ※マンドリン独奏:望月豪
カーゲル「Musi」
ラヴェル/鷹羽弘晃 「クープランの墓」

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