ギターの時間、2009年11月11日号
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プラネットスピリタ(2)

ユニバーサルミュージックからデビューするプラネット・スピリタ〜堀雅貴、丸本大悟インタビューの第2回です。マンドリンの世界で出会った2つの才能が、音楽の宇宙にデビューし、11月11日、ついに燦然と光を放ち始めました。あくまでマンドリンの愛らしさを損なわず、しかし、底知れないパワーも垣間聴かせるプラネット・スピリタ、デビュー作の制作現場の話題に突入していきます。

(interview:Kazutaka Ebe/photo:KaeruCamera)

歌手柴田智子とマンドリン

ーーそこまでいろいろ考えたり要求したくなるのも柴田さんがマンドリンに惚れているからこそですよね、きっと。マンドリンとの出会いはどういうものだったんですか?
柴田:ニューヨークにマンドリンカフェがあって、週末疲れるとよくそこへ行ってマンドリンを聴いていたんです。
ーーフラットマンドリンですよね?
柴田:いえ、ボウル型のマンドリンです。
ーーバンドで?
柴田:いえ、それがソロなんです。イタリアンのカフェで夏は中庭で冬は暖炉があってそれを囲んで。テーブルも床も大理石でとても響きがきれいでした。
堀:僕もその話を聞いたとき意外に思いましたけどね。
柴田:なんて心安らぐ空間音楽だろうって思いました。
ーーそうですか? 音域が高音に偏る楽器だし、金属弦だし、どうかすると耳あたりがよくないんじゃないですか?
柴田:それが、彼らが弾いていたのはほんとうに優しい音楽でしたね。
その音楽に出会う直前、自分の音楽的な展開を模索してフィンランドに行ったりして新しくクリエイトできる音楽や自分とコラボレーションできる楽器を探していたんですよ。
 小さなハープのようなカンテレとかね。おもしろいな、と思って日本でできないか、と探したら奏者がなかなかいない。ようやく北海道におひとり見つけたけど楽譜が苦手とかで、なかなかいっしょにできないな、って思っていたこともあったんです。そんなとき、ほんとに夢の中でマンドリンの音が鳴っていて、舞い降りてくるような音でね。で、イタリアをテーマにした音楽会のときに堀さんに出会ったんですよ。
堀:カルテットでしたね。
柴田。そうそう。それで、その前に私はニューヨークにいたときには9.11のテロ事件現場にも遭遇したしその後病気にもなったりしていて、その後にマンドリン音楽に出会ってものすごく癒されたんです。その想いを他の人にもどうしても伝えたいって思ったものだから、もうあとはつっぱしってここまできましたからね(笑)。
 
デュオとソロ

ーーお2人ともソロのマンドリン、デュオの演奏どちらも経験があると思いますが、デュオの魅力、つまりスピリタの魅力はどこにあると考えていますか?
堀:じつは、僕自身はソロとか、デュオとかって考えたことがないんです。むしろ1、2本のスタイルとオーケストラの違い〜多いか少ないかっていう違いは感じますけど。
ーー作曲するときの考え方は?

丸本:僕もそんなに違いを持っていなかったですね。音色をどう生かすかということは、ソロでもデュオでも考えるし、そこでなにか魅力が減ったりするということはないと思ってますし。増えることはあってもね。
ーー必ずプラスになると考えているわけですね?
丸本:僕の音に、堀くんの音が加わる、つまりそこに2つの魅力があるわけだから、そのぶん、一人でやるのと比べると、魅力は増えることはあっても 減ることはないというふうに思ってます。
ーーレコーディング現場では実際どうでしたか? 2人いっしょに同じ空間で演奏したんですよね? お互いの生音を聞きながら?
堀:えっとブースを分けてはいないです。同じ空間で、すぐ隣に並んでいるんですけど、ヘッドフォンはしてました。大きなスタジオでしたね。マイクを6本くらい立てて。
ーー楽器に直接それぞれ1本とやや離れてステレオで2本、アンビエントで2本ですね。
堀:それでお互い間近にいるんですけど、自分たちが聴く音はマイクが拾った音をヘッドフォンで、というかたちでした。
ーー違和感はありませんでしたか? 普段の感じといっしょ?

堀:大違いでした。初めての感覚ですね。ほんのちょっとならしただけで「どーん」と鳴るから。
ーーノイズに対して気を遣うということですか?
堀:いえ、それよりまず、大きな音を1回も出せなかったですね。
柴田:最初は普段通りに弾いたんですよ。そしたらレコーダーのリミッターが振り切れて、もう全然・・・。
堀:それで、「こんなかんじでいいの?ええ?」っていうかわいい音量で弾いてましたよ。
柴田:細部の表現のしかた、演奏のことで打合せにいったら、「え?あなたたち、ほんとに弾いてるの?」っていうくらい小さな音でしたよ。
堀:というか、あとから聴き比べてわかったのは、プロデユーサーがそういうやさしい音の方向を狙っていたんですね。
だからレコーディングで、なにかほんとうに「作品を創った」みたいな感覚が強かったですね。
ーー丸本さんは、自宅録音もよくやるんですよね?

丸本:自主制作したときは、ふつうのコンサートと同じ感覚で弾きましたよ。だから今回とはずいぶん違いますね。
堀:このレコーディングには、マンドリンもマンドラも2台ずつ持って行ったんです。マンドリンはいつも使っているオールドと、最新のモダンなマンドリン、友達の製作家で笹川さんと言う人の作と。対照的な2本ですね。それを曲によって使い分けました。
(続きます)
Planet Spirita
▲マンドリン・デュオPlanet Spirita
(ユニバーサルミュージック 11月11日発売UCCY-1010¥3,000))
【収録曲目】
マンドリン協奏曲 第1楽章(A.ヴィヴァルディ)/キセキ(GreeeeN)/遠い日(丸本大悟)/ハープ協奏曲(G.F.ヘンデル)/かえるのうた(ドイツ民謡)/HOTEL CALIFORNIA(D.フェルダー, D.ヘンリー, G.フライ)/カヴァレリア・ルスティカーナ間奏曲(P.マスカーニ)/May(丸本大悟)/スプリング・ソナタ(L.ベートーヴェン)/リュート組曲第2番より 前奏曲(J.S.バッハ)/ピアノ・ソナタK.545より 第1楽章(W.A.モーツァルト)/イン・マイ・ライフ(J.レノン&P.マッカートニー)/Spirit of Planet(丸本大悟)/Lovin’ You (M.リパートン, R.ルドルフ)


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▲マンドリン・デュオPlanet Spirita
(ユニバーサルミュージック 11月11日発売UCCY-1010¥3,000)



柴田智子リサイタル
▲ 柴田智子 ソプラノ・リサイタル CD発売記念コンサート(2009年11月28日(土))に堀雅貴もゲスト出演!