●編曲書き下ろし
ーーところで今回のために編曲された作品があるんですね?
久保田:ロッシーニとレスピーギの2曲を今回編曲しました。「セビリア〜」のほうは先に書けていたんですがレスピーギが難航しまして・・・。それが出来上がったのが2月に入ってからです。練習は、できあがった順に1楽章2楽章と進めていましたが3、4楽章が最後になって。
ーーこの作品のオリジナルは管弦楽の大きな編成用ですか?
久保田:5パートの弦楽合奏です。難しかったのは4曲目のパッサカリア。やはり擦弦楽器だからできる表現がたくさんあるんです。それを、どう撥弦楽器用にもってくるか。そこですね。
ーーそのへんの変換の方程式みたいなものってないんでしょうか? やはりその作品に合った最良の方法を作品ごとに編み出したり創ったりすることになるんでしょうか?
久保田:マンドリンの表現力を研究というか、日頃感じていると、いいですね。「あ、ここはマンドリンでやるならこうしたほうがいい」とかね。で、そう思えた作品を選ぶんです。
ーー選曲がまず重要なんですね。どんな曲でもやろうと思えば出来そうではあるんだろうけど・・・。
久保田:そうですね。この曲では1曲目「イタリアーナ」とか、 「シチリアーナ」というマンドリンでもよく演奏される曲が含まれているんです。「シチリアーナ」は途中難しいところもありますが、よく知られていますね。だから2曲め、4曲めも難しいんですが、すごく魅力的な曲だからということで取り上げることにしたたわけです。ただ、実際に初めてマンドリンでやるとなると、なかなかよく鳴らなくて、少し時間がかかったんですが。
ーーその難しいところは、どのパートになにを歌わせてハーモニーを作るかということなんですか?
久保田:楽器としてはだいたい同じような編成の譜面ですから、そのままやっても、演奏できないことはないんです。でもマンドリンのために考え直さなければ効果があがるオーケストレーションにはならないんです。
それから弾き方。たとえばバイオリンがピツィカートで弾くところを、同様にマンドリンで指で弾いても、効果的なピチカートになはらないんです。それじゃどうするか? これはホルンの演奏方法ではゲシュトプフトと呼ぶ奏法を使っています。ホルンのホーンに手を突っ込んで鼻の詰まったような音にする方法がありますよね。ギターで言えば、ピッキングする右手掌の外側の部分を駒の上にのせて弦を押え込んで弾く、ミュートとかになりますね。
ーーそういう工夫が必要なんですね。
久保田:そういう指定をしたり。しかしピツィカートに対してはすべてその方法で対応するのではなくて。ここはトレモロで演奏した方が良い、ここは響きを抑えた方がいい、とか。そうやってマンドリンでできる表現をすべて駆使していくんです。
ーーどういうものが最適か、という確認作業はどの段階で行われるんですか?
久保田:ギターの場合は押さえ方のこともありますからギターを手元で弾いて書くことも多いです。マンドリンの合奏部分は、だいたい経験的にわかるし、思った通りの音が鳴ってくれます。でも、実際の練習の場で演奏してもらって確認して修正することもあります。これができるのは幸せなことだと思っていますよ。
ーー見どころ聴きどころが随所に隠れていそうですね。
久保田:この2曲以外は全部マンドリンのためのオリジナル作品ということになります。マンドリンのためのオリジナル作品だけで構成すると、マンドリン・ファンのお客様にはいいんですが、一般の音楽ファン、クラシックファンの方にも飽きずに聴いていただきたい。だからこの2曲はどうしても入れたかったんです。編曲作業はたいへんでしたけど。
ーーマンドリンのためのオリジナル曲と、クラシックの編曲作品の、クボタフィロによる対比。ここも聴き所ですね。楽しみにしています!
久保田:ファルボの組曲「スペイン」はハープも入ります。こうしたクラシックオーケストラの楽器がひとつ入るだけで、マンドリンだけのオーケストラとは印象がだいぶ変わって身近さを感じることができます。まだ席は少しあります。ぜひ、いらしてください!!
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