クボタフィロ マンドリーネン オルケスター第17回定期演奏会「スペイン・イタリア音楽紀行」が2月28日に行われる。このオケの主宰者で指揮も務める久保田孝氏に公演の聴き所を伺った。間近に迫った演奏会のプログラムは、マンドリンのために書かれた4作品と、今回氏の手により新たに編曲を施された作品が2つ。昨年のフランス音楽特集に続き、色彩感豊かな音楽が広がりそうだ!
●地中海の光を集める
ーー今回の選曲意図を教えてください。
久保田:昨年の「フランス音楽特集」(第16回定期演奏会)のときお客様にとらせていただいたアンケートを元にしているところがあります。マンドリンといえばイタリアという、まあマンドリンファンには一般的なイメージがありますね。フランス音楽などあまり演奏される機会は多いとは言えないと思います。でも「よかった」という賛辞をいただけた。そして、「今度はフランスを含む地中海をテーマにしたらどうか?」というご意見をいただいて。そこでまず曲を集めてみたんです。すると多国籍な上に小さな曲が並ぶようなかたちになって、少しまとまりがよくない。そこでイタリア、スペインに絞ろう、いうことになりまして。しっかりした作品がありますから。
ーークボタフィロの定演らしいプログラムといえそうですね。
久保田:イタリア特集を組むという考え方もありました。でもイタリア作曲家のオリジナル作品をとりあげることは、これまでにもやってきた。そこでクボタフィロにとっての新しさを目指しました。同じ曲でもいろいろな取り上げ方ができますね。国別であったり、作曲家の特集であったり。今回はフランス特集に続く地中海がテーマのスペインであり、イタリア音楽です。
ーー一般的なイメージに近い「スペイン〜イタリア」のように思えます。しかも、とくに「器楽的」というよりメロディーがはっきりしていてわかりやすそうな印象がありますね?
久保田:そうですね。ただ、ブーシェロンなんかは、弾くのはやさしい。でも聴かせるレベルに持っていくのが難しいという作品ですね。
ーーネットで検索してみるとその「スペインの印象」(ブーシェロン)はいろんなオーケストラがさまざまに取り上げていて、音源を聴かせているところもあります。広く親しまれている作品なんですね。戦前から人気があるようですし。
久保田:3楽章「オレンジの木の下で」や4楽章「ボレロ」は、とくに単独で取り上げられることも多いですね。
ーー弾きやすいというのは、メロディーがはっきりしていて、かつアレンジ的な複雑さがないということですか?
久保田:それと、とくにハイポジションがあるわけではなく、大きな飛躍がない。そういう意味で弾きやすいんです。それだけに聴かせられる作品に仕上げるのはなかなか難しいんです。だいぶ弾き方等を工夫しました。作品は発表当時以来の出版された楽譜があるんですが、このままでは音楽的に少しまずいな、という部分があったりもするので、そういうところに手を加えてもいます。
この作品はずいぶん時間をかけて練習しています。
ーー先生の「奇想曲イタリア」は、上智大学マンドリンクラブのために書き下ろされた作品で1991年に初演されたということですが、以後、何回かプログラムに載せてらっしゃいますよね?
久保田:僕はこの作品がとくに気に入っているんですが、他ではあまりたくさんは演奏されていないんです。タランテラの部分が速くて難しいということもあるし、詩のついた歌の部分があるということもアマチュアマンドリンオーケストラには難しいんですね。
「譜面をぜひ見せてください、分けてください」というお話はいただくんですが、その歌の部分が課題になる。でも、もっと聴いていただきたくて、これまでに自分のオーケストラではずいぶん演奏してきました。
ーー歌はメゾソプラノの音域を指定しているんですね?
久保田:作曲した当初はテノールを考えていたんです。でも発表の段階で井坂 恵さんというすごくきれいな声の歌手にお願いすることになったので、彼女の音域に合わせました。最初は、あの方が二期会の研究生だった頃でした、以来十数回井坂さんで演奏してきました。
ーー詩はどのようなものなんですか?
久保田:イタリアの詩人の作品を使っています。全体は4部で構成されています。それぞれ休みなく演奏されます。最初がタランテラ、シチリアーノ、そして歌、もう一度タランテラで終わるという組曲形式です。
ーーその歌の部分を今回はコーラングレ(イングリッシュホルン)で演奏するわけですね?
久保田:「歌の部分は楽器でできるようにしてほしい」という声も聴いていましたしアマチュア合奏団でも演奏しやすいように、と。ただ、同じマンドリン系だとバックの音に同化してコントラストが難しい。それなら、他の楽器で歌のように、人間の声に近いもの、ということで考えついたのはコーラングレかサキソフォンか、チェロか・・・。最初はテノールを想定していたので、そのへんならうまく意図を表現できるかな、と。で、第15回の定期演奏のときにコーラングレでやってみたんです。
ーー選んだ理由はどういうところですか?
久保田:以前別の演奏会でお願いしたことのある原田和篤さんというオーボエの方がいらして、とても上手く、ぼくも気に入っていたんですが、その原田さんにアルトで弾けるコーラングレなら吹いてくださるんではないか、と相談して、試しに譜面を渡し、演奏してもらったんです。もう、他の楽器を試す必要がなかったですね。すぐに決めました。
ーーピッタリだったわけですね。CDでも、歌、コーラングレ版、どちらも残されていてどちらの演奏も捨てがたい魅力がありますね。
▲ページの先頭に戻る
| 1 | 2 |
<関連記事>
◆久保田孝氏に聴くマンドリンオーケストラの明日
◆クボタフィロ第16回定期演奏会レポートレポート(1)
◆クボタフィロ第16回定期演奏会レポート(2)公演の舞台裏から