2009-03-30ギターの時間
マンドリンでトレモロのツブを揃えるコツと効果。
表現に大きく関わるポイントをさらに詳しく伺っています。
堀 | 数えて弾くと聞くと、なにかデジタルな印象を 持ってしまう人も多いと思うんですが そんなことは全然なくて、これは基礎だと思います。 |
○●○ | 合奏であればなおさら基本と言えそうですね。 でも、一般的ではないんですか? |
堀 | たとえばこのトレモロは 最後はダウンで終わるとか アップで終わるとか。 または、「最後はどちらで終わって、 その次はどちらから始める…」 というような一定の具体性、合理性はあると思いますし そのへんでは合理的で、そこまでは共通しているんですが、 ここまで細かく規定して考えて練習しているところは 少ないと思います。 ないかもしれないですね。 |
○●○ | そういう情報も少ないんでしょうか。 |
堀 | 情報交流は盛んとは言えないと思います。 最近はそうでもないですが、以前は、むしろ 「発想がデジタルだ」とか 「音楽がMIDIみたいになってしまう」とか、 いろいろ揶揄されることも多かったんですよ。 ただ、そういうことは実際の体験がないところで言われることも多かったですしね。 クボタメソッドと言うと狭義の意味では この回数を数えるということ。 でも、メソッド全体で言っていることは。 このことを「道具」にした音楽の構築方法なんです。 |
○●○ | そう思って眺め直してみると、 偶数系は比較的やさしいかもしれない。 でも3拍子系、ワルツ系というか そういうのは難しくないですか? |
堀 | 速さの基準は、こんな感じです。 それで、最初に練習するのは1小節に6回なんです。 「タカ・タカ・タカ」。(1往復でタカ) |
○●○ | ああ、すぐにできそうですね。 |
堀 | 次に練習するのが3回です。 「タカタ・カタカ」。 |
○●○ | ああ、ちょっと練習が必要そうだけど。 がんばればできそうかな。 |
堀 | で、練習しているとどうなっていくか? もう数えるのは面倒くさくなって 6個でひとかたまりという感じで 身に付いていってしまいます。 こういうことを準備段階にやっていくわけです。 単語をひとつひとつ覚えるみたいに。 それがさっきお話した第1巻です。 久保田教則本の1巻では、これを2回、3回、4回・・・ の順番でやっていきます。 |
○●○ | なるほど。 |
堀 | それと、これは久保田先生がおっしゃていると思うんですが なぜ、4回か? 4回じゃなくてもいいじゃないか? という意見もあると思います。 以前伺った話ですが 学生時代だったか ロシアの音楽をたくさん聴かれていた頃に バラライカのテンポの早い演奏にも 魅せられてたくさん聴いていた。 その中で ある曲のある難しいパッセージになると どんな演奏家のものを聴いても同じように 弾いている、ということに気がついたそうです。 ゆったりするところや 解釈が演奏家に委ねられているところは それぞれ自由に弾いている。 でもそこだけは、どの演奏も同じように弾いている。 で、これは何故か?と分析を始められたそうです。 |
○●○ | なるほど。 |
堀 | そしたら「このテンポで弾くところ」だったんです。 それで、そこには何ツブ入っているかをカウントした。 そしたらそれが、人の耳に一番心地よく感じられる テンポと回数の関係になっていたということだったそうです。 そこから発展していって確立したのがクボタメソッドだと 思います。 だから決めてある回数は人間の感覚で 聴きやすい、弾きやすい、自然な 数字の設定にはなっているんですね。 |
堀 | ツブ一個一個に着眼できるような慣れがあれば それでいいと思うんです。 僕が面白いと思ったのは マリンバなんです。あの楽器の実際の演奏も 数えるということは一切ないそうです。でもツブを詰めて 緊張感を出すところもあれば ゆるめて、こう、ゆらぎを出すとか。 それってマンドリン合奏でもできることだよな、と思って。 |
○●○ | まだまだ発展の可能性を感じさせるお話ですね。 ありがとうございました。 |
(おしまい)
バックナンバー | 第1回 マンドリンのと出会い 第2回 マンドリンのと出会いその2 第3回 フォームと久保田メソッド 第4回 音のツブを揃える 第5回 音のツブを揃える-その2 |
2009-03-30
ギターの時間