2009-03-09 ギターの時間

マンドリンの演奏フォームや練習方法の話題が続きます。
ことに、堀さんがレッスンで学んできたこと、そして今は生徒さんに
伝える立場になった彼が、教えていることとは?
久保田メソッドの核心部分に、具体的に迫ります。


○●○  演奏フォームは今のクラシックギターのフォームが
割合似ていますね。
堀  ピックを使う楽器だったらそれほど
大きな違いはでないように思えるんです。
右手もエレキギターのピッキングを見ていると
けっこう通じるものがあるな、と思うんです。
で、一定の合理性があるように思います。

だからマンドリンもマンドリンとして
研究してやればいいんですが
研究していた人がいない、とか。

堀  やっぱり今のところ
アマチュアの楽器、というかんじなんです。
だからそれぞれの学校の中だけの文化だったり
地元の集まりだったり。
その中で少しうまい人が
「こうしたらやりやすかった」ということを
伝承して行っている。
そういうことでバラバラになっている。

だからギターとの大きな違いというのは
演奏の方法、可能性をちゃんと
研究した人が圧倒的に少ない。
そこに問題があると思います。

ギターも国内では音大けっして多くはないですが
マンドリンはさらに少ないですし。
ドイツにありますね。

堀  それは教授がいないから当たり前だと思うんですが

あとバイオリンの方なんかとやったときに
言われてしまうのは、ヴィブラートがかからない。
かかりにくい。つまり表現の幅が狭い。
すごく言われます。

○●○  ああ。
堀  でもそこは、僕は久保田先生の門下で
よかったと思うところなんですが
たとえば、バイオリンでもあるいはギターでも
ピツィカート奏法がありますが
マンドリンでも奏法は変わりますが
そういう効果が出せる。
そういうことを知らない人が多いですね。

クボタメソッドは端的にはトレモロの
数を揃える、というところに話題が
集中しますが、演奏方法も
長年研究されてきておられますから
こういう音楽で、こういうところは
このくらいのテンポでこういう音の出し方をする、
それでこういう演奏効果が出る…ということを
たくさん学びましたね。

○●○  そういうことを自信をもって
教えることができる方が
少ないんですね?

堀  そうですね。演奏家で、教授法を持っておられる方も
もちろんいらっしゃいますが、
僕から見ると久保田先生は指揮者ですし
マンドリンだけをやってこられた方じゃないので
その意味でも音楽を大きく見れると思います。

○●○  久保田先生に具体的に教わったことは?

堀  楽理はやっていないです。それは
指揮科のときは30分は芸大の赤本を使って
和声学をやり、残りの30分はバトンテクニックとか
ソナチネを実際にピアノで弾いてみて
ここがどうなっている、というアナリーゼをしてみたり
そういうことをやっていました。

器楽科のときはまずは教則本を使って
教則本のなかでちょっと変わった音符が出てきたときに
「これはなんですか?」
「あ、わかりません」
とかってやってました。すると
「これはこういう和音だから、
ここに強調のヤマをもってくるといい。そうすると
和声感が出ます」
とかって教わる。そういうかんじでした。

だから曲を通して演奏法を学ぶという感じですね。

○●○  その頃の教則本は?

堀  まだ、先生自身がまとめられた本がでていなかったので
オデルの教則本でやっていました。
まあ曲集みたいなかんじになっていて
これは4巻に分かれています。

僕のレッスンはほとんどこれでやっていました。

やっているときに
「そこのスラーはおかしいから切って」とか。
先生の見地でおかしいところを修正しながら
やっていました。

で、それら修正箇所をまとめたものが
久保田先生監修の「オデル練習曲集」
ということになるんです。
曲の順番、指揮者の見地よるテンポの設定とかが
監修されています。
テンポ設定によって
トレモロの回数が変わってくるわけですよ。
だからそれらを考慮して
曲の順番も並べ直されていますね。

○●○  なるほどね。そうすると
音符1個のなかにトレモロの回数を入れるって言うのは…
ああ、楽譜にかいてありますね。8回とか…。

堀  たとえば、「何回」、というのは「1拍が何回」
という意味なんです。
これだったら4分の4で四分音符=72のテンポである、と。
この場合は四分音符を32分音符のようにやれば、
1拍に8ツブ入る。これをもとに練習しましょう、
ということです。

で、たとえば、ここなんか、
スラーがここで切れているので
フレーズを引き分けるためにトレモロを
続けたくないところなんです。
バイオリンだったら弓を返すところに
あたると思います。

で、弓を返す現象というのは音は切れない、
消音されてはいない
で、止まってもいない、けれど分かれている。
そういう状況ですね。

で、いろんな人がいろんなやり方をされているんですね。
で、切っちゃったりとか、トレモロを
途中でやめたりとか、隣の弦の同じ音が出るところを押さえ、
交互に弾いたり、あきらかに音色が異なって
妥当性に欠けると思います。

でもトレモロを途中でやめるといっても
ではどれくらい止めるんだ?といったとき
2人いたら、もう揃わない。

で、バイオリンったらそのとき音が持続している
中でのことなのでひょっとしたら
あまり大きな影響はないかもしれない。

ところがマンドリンは
アタックだけみたいな楽器ですから。
余韻がそんなにない。するとたた1ツブの違いが
ものすごいズレになってしまうんですね。

すると、おお人数で 合奏するときに
そのムラが表現になる場合だって
あるとは思いますが基本は揃える、
そういうことをやらないと
次の表現には向かえないことにまります。

じゃ、どういうふうにやるか。
1拍に8回ずつやる。
これだったら4拍目にも8回分の長さがある。
そのうちの最後の1ツブをぬいてしまう。
つまり弾かない。
要は1ツブ分の空白を作るわけです。

そういう基準をたててやれば
二人でやっても10人でやっても
揃うんです。同じ間(マ)が作れるんです。

○●○  ああ、なるほど。
堀  で、消音はしない。ヴァイオリンで言うところの
弓を返す間と同じ効果が作れるんですね。
そういう理屈でやっています。

基本は音を止めないためのものなので指は
押さえっぱなしです。

○●○  そうか…。
少し実演してみてもらえませんか。

堀  そうですね、いいサンプルがあるかな…。

(続きます)

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2009-03-09

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