ギターの時間|gtnjkn

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マンドリン演奏会報告

マンドリン・デユオの可能性「石村隆行×竹間久枝」マンドリンデュオリサイタルから

 東京(4月20日・けやきホール)と京都(4月27日・青山音楽記念館)でそれぞれ行われたこの公演の奏者二人は、師弟関係にある。お互い、かねてからの希望でもあったリサイタルとあって、選曲は興味深いものだった。
 それぞれが、今やってみたい、聴いてほしいソロ作品を持ち寄り、デュオ作品は今回の企画に合わせて石村隆行氏が選んだ。
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 1曲目ベートーベンの「アダージオ」(1796)。竹間+大國亨子(ピアノ)。聴き手の感覚としては少ーし早い(?)と感じるピアノのイントロがコンサート序章にピッタリのかんじ。よく、ベートーベンらしさがまだまだ感じられない若い頃の“秀作”的に紹介される。シンプルな和声と6/8拍子。個人的にはかなり凝っていて、しかも、とても洒落ていると思う。聴覚もOKだった頃の若い作曲家が、誰に聴かせるわけでもない作品を、たんたんと作るわけがない。内なる想いを音にした。そういう作品だと思う。晩年の弦楽四重奏とは対極の、言って見ればラブソング。作曲家の若い情熱と時代の匂いをむんむん感じる大好きな作品だ。
 竹間さんの奏でるメロディーが、歌う。惹き付けられた。1楽章のみの演奏。もっと聴きたい!
 2曲目メンデルスゾーンの「ヴァイオリン協奏曲ニ短調」(1822)から1楽章。竹間+大國亨子(ピアノ)。ヴァイオリンといえば有名な2大協奏曲「メンチャイ」(メンデルスゾーンとチャイコフスキー)の、あの作品ではなく、これも作曲者の若い頃、それも13歳のときの作品だ。楽想に耳の馴染みがうすいぶん、マンドリンによるメロディー・ラインが鮮明に飛んでくる。それでいてイマジネーションを掻き立てる。なんという早熟な作曲家だったのだろう! マンドリンの〜とか、ピアノではなくオケだったら? とか余計なことに気を散らさず、メンデルスゾーンが聞こえる。
 3曲目、石村+大國亨子(ピアノ)。ジュディチ(1874-1949)は“マンドリンの時代”に生きた作曲家だ。印象派〜近代の和声を肌で感じ作りだしていたはずの、このイタリアの作曲家が、吹奏楽など時代の要請とは異なる視点で書いた作品といえそう。ロマンティックな楽想と和声が、ゆったりと流れながらときに跳躍して、これは新鮮だった。
 4曲目、石村氏によるソロ。小櫻秀爾氏(こざくら しゅうじ、1938年 – )は、マンドリンが絡むオリジナル作品を、既に多数残している。この小品の名前「トッカータ」とは、石村さんによれば、もともと即興的な要素を盛り込んだ形式だったもので、それを冠しているところが、ポイントとのこと。ある大作の「カデンツア」と言われれば、そう思えてしまうような印象。作曲家自身による即興演奏のいくつかのメモが下敷きになっているのかもしれない。
 後半、邦楽器、とくに箏の調弦に基づく和声感、古代日本旋法なども感じる。短いが、「聴かせる」のは難しく、しかし日本らしさが込められた作品と感じた。

▼今回はこの小櫻作品を動画サイトから紹介。

スクリーンショット 0025-07-05 9.12.21 後半は2台のマンドリンによるステージ。
 デ・ベリオはフリッツェリのひと世代あとだが、ともに古典期の作品。古典派らしさとマンドリンがいかにピッタリと息の合うことか! 作品のセレクションがモノを言うのか、作品に対する練習が演奏者に作品を引きつけるのか。この二人の演奏は「マンドリンとは・・・」ということを越えて音楽が響くから、好きだ。

▼既に公開中

 「音楽が好き」は「マンドリンが好き」と同義語ではないけれど、「音楽もマンドリンも好き」な、竹間さんは、ツイッターで、よく料理のこと、子供さんのことをつぶやく。そしてその話題以上に多いのがマンドリンの練習のこと。ときにもがいている様子を赤裸々に。でもその裏にマンドリンが好きで好きでしょうがない気持ちが滲んでいて楽しい。
 
 次の公演計画は、ギターといっしょかな?とかロマン派かなとかいろいろ考えている様子。ぜひ、「つぶやき」とともに楽しみにさせてもらいます。

竹間久枝ツイッター・アカウント:@takemandolin

 一方、石村さんは公私ともに最近はさらに忙しそう。その中で、よくもこうした作品を見つけて来られるものだ。すでに楽譜として入手できるおびただしいイタリア作曲家らのマンドリンオケ編曲作品を発表しているが、まだ世に出していない作品もたくさんある。さらに同時進行で現地イタリアで、未だ眠っている作品を見つけてきたりもする。そうした作品を聴く機会は、それほど多くはない。とくにソロで聴かせてもらえる機会はなかなかない。今後どんな作品が聴けるかおおいに期待したい!!

 そして音楽作品は、演奏されて初めて評価もでてくる。それには聴き手として「演奏会に行く」ことが欠かせない。マンドリン文化発展の鍵は、マンドリン好きの、音楽好きの人たちの、聴いてみようかな? というその素朴な動機にかかっていると思う。これから夏、そして秋。もっといろんな公演を、聴きに行こう!

石村隆行Facebook:https://www.facebook.com/takayuki.ishimura.31

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