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マンドリン演奏会報告 演奏会報告

余韻覚めない第8回大阪国際マンドリンフェスティバル

(レポート:エベカズタカ/撮影:かえるカメラ Report:ebekaz / Photo : Kaerucamera / Clickright▼.)

The 8th Osaka International Mandolin Festival 2012 REPORT

[flagallery gid=26 skin=photo_blog_demo name=Gallery] 第8回大阪国際マンドリンフェスティバルが終わって2週間。いまだ余韻が頭の中をぐるぐるまわっている。その週のうちに、アレクサンドラ・コトコワ、ラダ・クリベンコ、市川敦嗣、ARSNOVA Mandolin Quartetらのステージ動画が、主催者でもある「Inoue Yasunobu」YOUTUBEチャンネルで公開された。既に演奏のレベルと質を感じ取っているひとも多いと思う。そうなのだ。一つ一つのステージをしっかりレポートしなければならない内容なのだ。それには、頭の整理も必要だ。といっても冷静になるのを待っていると時間もどんどん過ぎていく。というわけで、遅まきながら、まずは全体をレポートしておくことにした。

 前半は昨年の独奏コンクール入賞者演奏が6本。マンドリン部門とマンドラ部門の2部門で競われたので、各3位までの演奏者に30分前後から45分が割り当てられた。

 午後1時にスタートした演奏会が、ひと区切りをつけたのは午後5時。計4時間。主催者・ARTE MANDOLINISTICAの団員スタッフたちによる周到かつ献身的な運営でステージ進行は気持ちよくスムーズだ。そして演奏は、ひとつひとつは短めとはいえ、渾身のパワーで、「攻め」のプログラムを組んでくるだろうと予想を付けていたから、聴く方だって体力、態勢とも万全で臨んでいる。そして予想以上の、息もつかせない6シーンが連続。時間を忘れる4時間が、あっという間に過ぎた。

 会場となったフェニックスホールの特徴は、ホール案内のキャッチコピーは、“小ぶりながら、「キラリと光るコンサートホール」”。うん、たしかに。1階ホワイエは、ほぼホワイエ機能のみ。だから広い。エレベーター、エスカレータで2階に上がると、そこがホール。さらに1フロア上がると建物の3階が、ホール2階席になっている。ホール全体の奥行きは浅めだが、そのぶんステージをとても身近かに感じることができる。しかも天井は高く、開放感がある。音響も優れている。残響は長過ぎず、客が入っても適度、という印象。
 大阪・梅田駅から歩いても行ける便利なロケーションにあるのも特徴だが、近くを高速道路が走る。夜になると、じつは、このホールのステージ背景は幕を開けることができる。そこに、その高速を行き交う車のヘッドライトがそのままステージ背景になる。粋な演出ができるしかけだ。

 さて、前半が終了するまでにも、客はステージの合間合間にトイレタイムをとったり休憩したり。このとき使う通路は楽屋スペースとホール客席、ステージが、オペラハウスの外周通路のようになっていてつながり、ここを、出演者もよく行き交う。サインをしてもらうのもよし、話をするのもよし。通路がこんなスペースになるのも、このフェニックスホールの特徴だ。

 午後6時からいよいよ後半。アルテのコンマスでもある和泉 亨、そして井上泰信の各ソロをはさみ、野口實 マンドリン制作50年記念コンサートとしてARSNOVA マンドリンカルテット、望月豪(第5回コンクールの優勝者)、そしてスペシャルステージ、アヴィ・アヴィタル CD発売(ドイツ グラモフォン デビュー)記念コンサート。それぞれが1時間前後で行われた。計3時間越えのステージとなった。


 終わった直後、たしかに疲れた。しかし、耳の興奮はその疲れを感じさせない。それどころか余韻は今も続いている。
 マンドリン音楽だけを聴き続けて飽きない。むしろ、一音一音、一瞬一瞬の空気が心地よく、そして刺激的だった。ざっとおよそ40曲を聴き続けたマラソンコンサート。コンサート冒頭の挨拶で主催者・井上泰信氏は「8時間耐久」と笑いながら案内していたが、まったく「耐久」ではない。マンドリンマジックに浸り続ける快感を、主催者、スタッフ、出演者たちは教えてくれた。同時に、「世界レベル」のマンドリン演奏の実力を堪能させてくれた。

 今年の10月は日本マンドリン連盟主催によるマンドリン独奏コンクールが、この翌日に行われた。さらに翌々週には前橋で恒例となるマンドリンフェスティバルが行われた。
 この10月が終わると、11月、12月と大学のマンドリンクラブ定期演奏会が次々に行われる、マンドリン・シーズンの開幕が、いわば10月だと言っていいい。その中で、今回の大阪国際に集った演奏家、マンドリン音楽ファンは、伝説の現場に立ち会ったのかもしれない。日本、ロシア、イスラエル。演奏家の国籍数自体は3カ国だった。しかし、彼らが披露した演奏は、既にロシアの音楽シーンはもとより欧米の音楽シーンで確かな評価を受け絶賛されている。マンドリン音楽のステージが、昨年までとはまったく異なる次元にあること、新しい世界の扉が開かれたことを告げていた。もちろんこれまでのさまざまな歴史の上にあるものだけど。

 各ステージは、少し時間をかけてじっくりレポートしたい。

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