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MMO TIMES 第2回 メトロポリタン・マンドリンorc.7/31ミーティング。ラヴェルへのアプローチは…

メトロポリタンマンドリンオーケストラミーティング メトロポリタン・マンドリン・オーケストラ7月のミーティングを取材した。本番(9/19)まで残すところ2ヶ月を切っているこの日、東京・目黒区大岡山住区センターに集合。40人あまりを前に、予定時間になると、早々、この団の音楽ディレクターである笹崎譲氏が前に立ち、スライドとピアノによる実演を駆使し、ラヴェル「弦楽四重奏曲」についての解説/レクチャーが始まった。この作品は、今公演のメイン・プログラムのひとつであり、この日のミーティングは、この作品を重点テーマに、全員で共通理解を深めていこうという趣旨だ。
 MMO TIMESの第1回ではドビュッシー「牧神の午後への前奏曲」をテーマに行われたミーティングの様子をレポートしたが、この日の進行も、大筋は同様の手順。しかし作品が変わると、これは当たり前だが、内容は全く別もの。

 ラヴェルのこの作品もまた、個人的には耳に馴染んでいるつもりであったが、譜面と首っ引きで聴いたことはない。また、音符を眺めても、「どんな仕掛けが施されているか?」までたどり着くのはなかなか難しいと思う。これを笹崎氏は、自身の個人的な感想ではなく、楽曲分析を通して得た結果を音楽的な特徴として客観的に説明する。もちろんイデオロギーも入り込まない。比較対象とするのは音楽史上の他作品であり、音楽理論的な常識から見たラヴェルの「個性」だ。

 写真中スライドで投影されている箇条書きの特徴が見えるだろうか(←画像クリック:拡大します)。ラヴェルのラヴェルたる所以を、こんなふうに説明しながら、実音で示してくれるのがこのレクチャーの特徴だ。これが、ほんとうにわかりやすく、おもしろい。

 この日は、本番を振る指揮者:小出雄聖氏も団員たちと机を並べていたのが印象的だ。ちなみに小出氏のプロフィールはメトロポリタン・マンドリン・オーケストラのホームページにも紹介されている。

 ・・・と、それはさておき、楽曲分析。今回も、笹崎レクチャーではおなじみの形式分析リストと解説資料をガイドに進められた。

 形式分析リストは、縦軸に小節(時間軸)、横に特徴項目が並び、各特徴がどのように出現しているか、ひと目で分かるもの。各楽章ごとに全楽章にわたる特記すべき特徴が洗い出してある。A3全4枚半。たいへんな力作だ。
 解説資料には、形式分析リストで一覧化された特徴が、要約され言葉で箇条書きにされている。また、重要モチーフも譜例として抜き書きされている。

 「弦楽四重奏曲」はたいへん巧妙な、からくりと呼びたくなる仕掛けをあちらこちらに施してある楽曲だが、全体的には一見とても整然としており、知らなければ知らないままで「ラヴェルらしい響き」と納得することもできてしまうのがこの作品の特徴でもあるだろう。このあたり、オケで演奏する上では、たいへんな、いや、むしろやっかいな課題かもしれない。しかし、ここに音楽のより深い楽しみを見いだしているのが、メトロポリタン・マンドリン・オーケストラの特徴なのだろう。

 とくにモチーフの緊密な関連性についての言及は、ドビュッシーの解説/レクチャーの時同様、たいへん興味深かった。たんにCDを聴き直す上でも意識が変わる。全体の演奏にも大きな影響を与えるに違いない。
 笹崎氏は「この曲に関して、一般的に名盤と言われる演奏でも、モチーフの関連性から導かれたフレージングで正しく演奏されている例は少ない」と指摘する。さらに、「期間をかけて一つの楽曲と向き合うことができるアマチュアならではのチャンスが、ここにあるのです」と言う。

 なかには一瞬「それはさすがに考え過ぎでは?」と思える指摘もある。たとえば音階の音名に隠されたメッセージの存在。しかし、実際、ラヴェルのことだから、ひょっとして無意識に書き終わっても、きっとあとでニヤリとしていたであろうし、また、おそらくは笹崎氏が指摘する通り、師フォーレにささげたこの作品、GABRIEL FAUREのスペルからとった音名を、どこにどう使おうかと手の中に遊ばせながら創作に向かっていただろうことも想像させ、改めてラヴェルという人物を知る手がかりになる。

 レクチャーでは、ときおりラヴェルの「弦楽四重奏曲」以外の作品の音源を譜面を見ながら聴くことも行われた。比較的初期に書かれた「弦楽四重奏曲」が、いかに後のラヴェルの名作、たとえばバレエ音楽「ダフニスとクロエ」などに大きな影響を与えたことが実証されていく。

 一連のレクチャーを終えた後、この日も合奏練習に向かい、本番間近を実感した。メトロポリタン・マンドリン・オーケストラが作り出す今年の世界はどんな景色になるのだろうか?

 続報は早くも近日!(MMO TIMES第2回 終わり レポート:江部一孝/撮影:かえるカメラ)

9/19 紀尾井ホール(東京・四谷)開演:14:00チケットは「ギターの時間 オンラインショップ」へどうぞ。

※練習は随時進行しています。途中からの参加も歓迎とのことなので、このラヴェルの回のレポートをきっかけにこのオーケストラに興味を持った方、老若男女問わず同オーケストラ事務局まで連絡をどうぞ。この記事からコメントを寄せていただいてもオーケー、とのこと。

矢印メトロポリタン・マンドリン・オーケストラ事務局にメールする

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