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岩永善信 ギターの真髄、年末公演で魅せた!

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岩永善信年末公演より Photo by ebekaz

  さる11月26日、東京・渋谷HAKUJUホールで恒例となっている岩永善信ギター・リサイタルが行われた。その様子をレポート。
 第1部は、ヴァイス、サンサーンス、グラナドス。
 シルヴィウス・レオポルト・ヴァイスはドイツ後期バロック音楽の作曲家・リュート奏者でバッハとの交流もあったと言われる。今回演奏した作品 「アントレ&シャコンヌ」もリュートのために書かれている。6弦ギターでも演奏されるが10弦ギターは低音の動きが自然で響き全体が体に染み込んでくる。宮廷音楽というと「貴族の音楽」だし、我が身は決して貴族ではないが、演奏会場に、いにしえの空気感がサッと入り込んできたような気分は清々しく思わず居住まいをただす。トリルの装飾音がギターからコロコロと宝石のようにこぼれてくる。

 続いてサンサーンス「左手のための6つのエチュード」より、〈フーガ風に Alla Fuga、ブーレBourrée〉。ヴァイスの2曲が前半の序章なら、このサン=サーンスはちょうど2楽章的な色彩に聞こえる選曲と言えたと思う。6つの小品からテンポ感の早い2つ。「左手」のための作品なのだから、少し手を労わった音階かと思いきや、ラヴェルの作品もそうだが、ちっとも容赦しない。難曲に属すると思う。呆気にとられる。

 1部最後のグラナドスは「エピローグ」、2つのスペイン舞曲〈アンダルーサとホタ〉、「昔話」。サン=サーンス作品もそうだが、クラシックギター・ファンにはお馴染みのこれらのグラナドスも基本はピアノ作品だ。サン=サーンス以上にテクニカルな演奏を要求すると思う。さらにスペインと言ってもアンダルシア、カタルーニャ、バスク、バレンシアなど馴染みの州を筆頭に17の自治州からなる。それぞれに、言葉も含め特色があるという。音楽の香りも異なる。スペインの多様性が一本のギターから聞こえてくる不思議さを思う。

 2部はドッジソンの「パルティータ第1番」。続いてもう一回グラナドスで「スペイン民謡による6つの小品」から、〈前奏曲、祭りの思い出、東洋の行進曲、サパテアード〉の4曲。
 ドッジソンはイギリスの現代作曲家。2013年に亡くなっている。比較的受け入れやすい和声と構成の作品と言えると思う。10分近い緊張感の中に心地よい緩急・強弱のフレーズが明滅し合うように入れ替わりながら、気がつくとサッと終わっていた。演奏している指を追ってるいとあたかも手品を見ていたか催眠術にかかっていたかのように入り込んでいた。演奏後の拍手でハッと我にかえる。

 最後もグラナドス。こちらもスペイン各地の民謡をベースに作曲された作品集からの選曲だ。10本の指を想定して作曲されている曲を5本の右指で表現する。言葉から想像できる音楽をはるかに超えて、ギターによるグラナドスの奥行きは深い。48歳という若さで亡くなったグラナドスの、今年は没後100年。現代のスペインと100年前のスペイン、彼が生きた時代のスペインは様々に異なるだろうけれどもグラナドスを通して広がるスペインの風景はあくまでも美しくまた情熱的だった。

 アンコールは「アメリアの遺言」、「トルコ行進曲(ベートーベン)」、「聖母の御子」。

 なお、2017年末は以下の予定が決まっている。
11月5日(日)名古屋市・宗次ホール 午後3時開演
12月9日(土)東京・HAKUJUホール 午後5時30分開演
 また、4月はアメリカ公演、8月には中国コンサートを予定している。
他スケジュールは岩永善信公式HPをどうぞ。
http://www.yoshinobu-iwanaga.jp/

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