知らない土地のミステリー

 図書館のネット予約をよく利用する。気になったときに気になった本を気軽に予約でき、順番が来たら教えてくれる。なんて便利。ところが、「予約の本が届きました」とメールが来て、いざ借りるときに、はて、なぜにこの本を読みたかったのか?と首を傾げることもしばしば。。。

 アーナルデュル・インドリダソン著「湿地」 東京創元社 柳沢由実子訳

 これを手にしたときも、はて?と思った。
 ミステリーはほとんど読まない。紹介文には「世界のミステリ読者が最も注目する北欧の巨人、ついに日本上陸」とある。アイスランドで発生した殺人事件。行き当たりばったり、計画性も感じられない。単純粗野な事件と思われたが。。。

 まず、アイスランド。地名が馴染まない。もっと馴染まないのは人の名前、作者も、主人公エーレンデュルも、覚えられないし、性別もわからん!そして表紙。怖い!なにやら不吉な!

 これが、なんとも、読ませる。とにかく引き込まれる。映画を見ているような情景描写。意外な事件の背景。主人公の人物像。娘との難しい関係。事件そのものはひどい内容ひどい男。吐き気を感じるほどの臭い湿地の殺害現場。しかし、読み終わった後のなんとも言えない人間の哀しみ、切なさ、優しさ。そんなものを感じ、表紙を見れば、不吉さなどどこにも無い。眠る少女を静かに思う。訳者が作者へインタビューした内容もあとがきにある。なぜにひどい犯罪をリアルな表現で書くのだとの問いに、はっと、胸をつかれる答えがあった。

 ミステリーとして素晴らしい。情景表現、人間表現がリアル。そして、全く知らない国、アイスランド。その国を知るにはミステリーを読むと良い、そうだ。なにかひとつ、視点が広がったように感じさせられた。