アンサンブル・ビアンカ・フィオーリは社会人マンドリン・オーケストラのひとつである。「イタリア作品を主にした“純粋なロマン派マンドリン音楽”」を中心に演奏活動している。来年は創立20周年を迎える。
そのオーケストラが、今年定期演奏会の核に持ってきたのは、菅原明朗氏の「内燃機関」なる作品だ。
プログラム全体は、ロマン派マンドリンぽさに、一見彩られている。構成上前半に組まれたプログラムはこのオケのメンバーでもある山内豊彦さん指揮。マネンテの「序曲」からファルボ「ジプシー風セレナータ」、そしてアマデイの組曲「吟遊詩人」。力強さと繊細さが交錯しながら、ここではまさにロマン派が響いた。しかし、後半は一転。この作品はなんだ?
聴いて驚いた。タイトルで連想したオネゲルの「パシフィック231」以上ではないのか? こんな作品が埋もれていた? それでいいのか? いや埋もれてはいないのか? ともかく初めて聴いてびっくりした。こんなにおもしろい作品が、日本のクラシック音楽黎明期に生まれていたことが、うれしい。と同時に演奏レベルにびっくりした。しかも! とにもかくにも社会人マンドリン、つまりアマチュアの人たちが“発掘”・・・は、ひょっとしたら言い過ぎかもしれないが、少なくとも演じたことに、また驚く。もうわけがわからん。日本の社会人マンドリン集団、おそるべし!
この曲を指揮したのは同オケ団員の田口俊太郎さん。彼に話を聞いた。(ステージ写真:東昭年/楽器写真:Kaeruカメラ)
ーーこの作品の楽譜に最初に触れたときの感想/印象をきかせてください。
田口:楽譜は学生の時にも見たことがあるのですが、まさに機械を模した動きと
大きなオーケストレーションの曲という印象でした。
マンドリュートやマンドラコントラルト・パートを有し、管楽器も入るので、
自ら演奏することは無いと思っていました。
ーーマンドリン合奏とはいえないということですか?それとも曲調のことですか?
田口:今回、演奏することを検討することになり、再び楽譜を手にしたときの印象
も機械を模した音形の印象が強く、我々が傾倒するイタリア音楽のような
魅力的な旋律が存在せず、はたして演奏する価値のある魅力的な曲なのか・・・。
ずっと「???」という感じでした。
ーーずっと暖めていた、みたいなことかと思っていました。
田口:じつは作品の価値云々以前に、楽譜の記載が全てフランス語で、直感的にわからないところ
が多く、特に冒頭のテンポは、楽器の演奏能力上もっと遅く、重厚な感じだと
思っていました。・・・そう、ちょうどオネゲルのパシフィック231のように・・・あっちは蒸気機関ですけどね。
ビアンカのメンバーは難解な音楽に拒絶反応を示す傾向があり、この曲に
ついても例に漏れず、しばらくは苦悩の練習が続いたんですよ。
ーーそうだったんですか!!
(つづく)