今回のプログラムは、以下の3作品。
○ジャン・シベリウス(笹崎譲編曲)/交響曲第7番 ハ長調 op105
○北爪道夫/青い宇宙の庭III 〜独奏ギターとマンドリン・オーケストラのための(委嘱作品・初演)
○グスタフ・マーラー(笹崎譲編曲)/交響曲第10番 より アダージョ
作品の詳細な解説、北爪さん、福田さんのプロフィールがメトロポリタン・マンドリン・オーケストラのホームページで紹介されているのでぜひ参考にしてください。
 さて、このうち、今回リハーサルで聴かせていただいたのは北爪道夫さんの「青い宇宙の庭III」。この日が2回目の合わせだということでしたが、かなり完成されているように聴きました。しかし、1回終わるや、すかさず音色のこと、譜面上の注釈に関する解釈や実際の奏法の効果、うねり方やデクレシェンドの仕方などなどあちらこちらの部分に対して意見交換と試行錯誤の繰り返し。
 作曲家から指揮者、そして団員へ。指揮者と団員間、ギタリストと作曲家、また指揮者とギタリスト・・・。
 白熱したリハーサル。集中力もすごい。
 「あとは本番前のリハで確認!」というところまで約2時間。すごい密度の時間を後にして、指揮者=小出雄聖さん、作曲家=北爪道夫さん、ギタリスト=福田進一さんに伺います。

容赦のない要求

――リハーサルを拝見していて、団員の方に対する音の出し方、表現方法など、要求の仕方やレベルが容赦ないんですね?びっくりしました。
▲小出雄聖氏 小出:アマチュアだからここまで、なんて考えないですね。それより、アマチュアだからこそしつこく要求できるので、高度なことまでできたりもしますよ。
北爪:僕も全く同感です。
――最初に、小出さんと、このオケとの付き合いは・・・。
小出:もう20数年ですね。
――とすれば、その時間によって深まっている信頼関係も大きな力なんでしょうけど。
小出:えぇ、感覚的にはあっと言う間の20年ですが、でもその間、僕は(マンドリンオケの扱いに関して)大して成長してないけれど、オケの主力メンバーの成長は明らかで、彼らの要求は明らかに高度になってきています。だから楽器特性を熟知したうえで、彼らは僕より先回りして磨き込む、それを基に僕が仕上げる、という好い関係がありますね。
――その先頭に立つのが笹崎譲さんで、小出さんとオケの音楽的な橋渡しの役目を果たされているんですね?
小出:そのとおり、この20年の進歩の先頭に笹崎さんがいます。それでこのオケの能力もスバ抜け、いまでは国際的にも認められていると言っていいかと思います。近藤 譲さん、松平頼暁さん、湯浅譲二さん、オリバー・ナッセンさん(Oliver Knussen:イギリスの作曲家・指揮者)などなど。
 それにフィリップ・アントルモンさん(Philippe Entremont:フランスのピアニスト・指揮者)には、公開リハーサルの形で一度指揮をしていただいたことがあり、高く評価していただきました。とにかく海外に紹介するようにしています。
※近藤さんが、お友達のポール・ズーコフスキーさん(Paul Zukofsky:アメリカのバイオリニスト・指揮者)、オリバー・ナッセンさんに同オケの録音を紹介されたことと、ナッセンさんと小出さんが以前から知り合いだったことで一気に盛り上がり、それが海外のFM局で放送されたという経緯もある。


――そういったレベルの方に依頼してそれに応えてきたオケの実績が、また次の委嘱作品を生み出しているということでしょうから、そこは「すごい」、のひとことですね。
小出:いや、たしかに凄い方々が興味持ってくださっていて、僕もやり甲斐あるんですよ。今回も北爪さん、福田さんという凄い音楽家とのコラボレーションで興奮してます。福田さんと一緒にリハーサルする毎に、だんだんわかってきたんですけど、このギターコンチェルトは素晴らしい!
――オーケストラの意識の高さがいかに大きいか、ですね。でも最終的に音をまとめて「表現」を作っているのは小出さんですよね? まだリハーサルの段階でどんどん表情が変わりつつありますが、おもしろいです!この作品!!そういう面白さを引き出すのは指揮者の力じゃないですか?
小出:いや、僕はおまけみたいなもんですよ。でも、指揮者の立場から言うと、指揮の動き=オーケストラがその瞬間に出す表現なので、奇麗な指揮をすべきだと思っています。
 しかし、僕の予測を超えた現象の連続につい引っ張られてしまいがちです。つまり、音楽に深く入れば入るほど気になることも増えてくるので、のびのびと気持ちいい動きで指揮することが、通常のオケの数倍も難しいのです。
〈続きます〉

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