ギターの時間|gtnjkn

for around 50's,60's,70's,80's,90's,100's…Music Lovers.

ギター演奏会報告 ニュース マンドリン演奏会報告

第31回中学校高等学校ギター・マンドリン音楽祭開催

大賞はギター部門=関西大倉中学高等学校 クラシックギタークラブ
マンドリン部門=帝塚山学園ギターマンドリンクラブが受賞

[flagallery gid=46 skin=afflux_demo name=Gallery] 第31回中学校高等学校ギター・マンドリン音楽祭が6月9日(日)、大阪の千里金蘭大学・佐藤記念講堂で開催された。今年はギター部門、マンドリン部門のそれぞれで各6校の出演があり、熱のこもった演奏を披露した。

 プログラムで出場校を見ると大阪信愛女学院、神戸山手女子、同志社香里の名前がなく、いささか寂しさを覚えた。部員数減少や、学校のスケジュール、他コンクールとのバッティング等で出演を見送らざるを得ない事情もあると察するが音楽祭に長年出演してきた歴史ある学校には楽しみにしている方も多いはずだ。一人の来場者として、是非とも来年は出演して欲しいと願う。
 反対に特筆すべきは、新たな参加校が兵庫県立西宮今津高等学校クラシックギター部をはじめ公立校で3校もあったことだ。中でもギター部門の堺市立金岡南中学校ギター部とマンドリン部門の奈良市立富雄南中学校ギターマンドリン部は公立中学校単独出演である。昨年までも中学生は出演できたが、高校の付属中学校の生徒だけが出演できたと記憶している。中学生だけの演奏に注目が必然と集まる。
 講評者の先生は昨年と同じ顔ぶれで、各校につき2名の先生から講評をいただける点は良い。どうしてもギターの専門家、マンドリンの専門家で講評に偏りが出てしまう気がするのだが、どちらの専門家からも講評が得られるのはよいと思う。

関西大倉中学高校 さて、最優秀賞にあたる音楽祭大賞に輝いた学校を紹介しよう。ギター部門はマンドリンのオリジナル曲でありながらギターが持っている潜在能力を引き出して水の情景を時には激しく、時には美しく表現した関西大倉中学高等学校 クラシックギタークラブが、マンドリン部門は、指揮者の呼吸が音楽に乗り移って、曲の持っている魅力を荘厳かつ整然とした演奏で印象づけた帝塚山学園ギターマンドリンクラブがそれぞれ受賞した。

 ギター部門は、最近部員数の減少で廃部する学校もあると聞くが、どの学校も奏者が10名以上で演奏レベルも安定しており、音楽を細部まで表現しようと意識している学校が増えた。
 特に関西大倉中学高等学校クラシックギタークラブは出だしのフォルテッシモで聴衆をひきつけ、そのまま最後まで飽きさせず緊張感のある音を繰り出したのは見事だった。中間部のゆったりした部分では、プライムのソロで水が一滴ずつ落ちていく情景を連想させた。またtuttiとsoloの対比が曲を盛り立て面白かった。ただ、アルトギターのフォルテッシモが力任せでなく、遠達性のある音であれば、なお良かった。

 その点、京都府立北嵯峨高等学校クラシックギター部は審査員講評でもあったが、音がボディから響いており、フォルテッシモでも無理がない。基礎技術の高さがうかがえる。しかし、同じメロディを同じように演奏してしまう点や、ベースが淡白で拍子を感じない部分があることで曲が前に進まなかったのはもったいない。

 堺市立金岡南中学校ギター部の花のワルツは見事だった。ギターでこの曲を表現するのは難しくテンポやリズムを崩しがちだが、それが全く違和感がなかった。演奏者の技術レベルがパート間で均等だったのが良いのだろう。テンポ、強弱の変化、音色の対比も鮮やかだった。曲と曲のつなぎの部分もよく計算されていて、それが曲全体の雰囲気につながっている。
 指揮者の先生の指導はもとより、生徒がそれに十分応えていることに感嘆する。演奏者の表情が曲にあわせて豊かになるとなお良いと思うが、堂々たる演奏である。

 その他、音質の変化も気を遣いながら、一音一音丁寧に演奏した大阪府立佐野高等学校 ギター部、初出場ながらポップスとクラシックの有名な2曲をベースで引っ張り、アルペジオを美しく響かせた兵庫県立西宮今津高等学校クラシックギター部、ピアソラのタンゴが持つ甘い雰囲気を味あわせてくれた桃山学院クラシックギタークラブにも心から拍手を送りたい。

teizukayama 次にマンドリン部門を紹介する。帝塚山学園 ギターマンドリンクラブは長年務められていた金治先生の指揮ではなく生徒の指揮であったが、安定感はそのままに表情豊かな演奏だった。指揮者と奏者の持つ雰囲気が曲とマッチしていた。各パート間のバランスが非常に良く、マンドリンとドラの掛け合いも心地よく自然と耳に入ってくる。曲終盤にかけて、どんどん盛り上がり、さらに各パートの縦ラインがビシッと決まり心地良い。大人数にもかかわらず、音が会場に澄んで聴こえる。自然と背筋が伸びた。

 帝塚山学園と遜色ない演奏を聴かせてくれたのは同志社女子中学高等学校マンドリンクラブ。第2楽章のワルツのリズムに乗って1stマンドリンの奏でる演奏は美しい。
 マンドリンだけの演奏とtuttiの対比が非常によくできている。1st、2ndが向かい合う配置なので、お互い語りかけているようだ。第4楽章は躍動感の中に大らかに歌う部分がとても心地よい。低音パートが旋律パートを少し飲み込んでしまい、重たくなる部分があったが、これも若さゆえの元気さだ。いつか、この楽団の演奏で全楽章を聴きたい。

 ベートーヴェンの大作の中でも難曲に挑んだ大阪成蹊女子高等学校ギターマンドリン部。力強い第一主題とおとなしい第二主題を技術レベル以上に気持ちで突っ走った感は否めないがベートーヴェンらしい勇壮な主題を表現した演奏は印象に残る。
 また、マネンテの祝典行進曲らしく、華やかさの中にある荘厳さも含めて優雅に描いた帝塚山学院中学校・高等学校ギターマンドリン部。マンドリンのトレモロの音質にやや難あり、と感じさせた。これが改善されれば、さらに心地よく聴けたはずだ。

 その他、マンドリン部門では初の公立中学校の出場、ギリシャ神話をモチーフにした曲の魅力を実直にまとめ、会場を楽しませた奈良市立富雄南中学校ギター・マンドリン部、アモローゾの情景深さを表現した松蔭中学校・高等学校器楽・弦楽部(マンドリン)にも同じく拍手を送りたい。
 各校の演奏の後はギター部門とマンドリン部門にわかれた合同演奏、さらに賞の発表後には参加者全員による大合奏があった。参加者全員の大合奏は大阪成蹊女子高校の指揮者による「マイウェイ」と「ラバースコンチェルト」だった。400人の演奏者が舞台と客席を取り囲んでの演奏。文字通りサラウンド! この感覚は斬新だった。もう少し配置を考えるとさらに面白くなるのではないかと感じた。

 全てのプログラムを聴き終えると、どの学校も1曲にかける執念がダイレクトに音楽として伝わり、清々しさを感じた。出演者にとっては、将来の糧として貴重な体験になったのではないだろうか。この舞台までに費やした努力は並々ならぬものだったに違いない。
 また、音楽祭の雰囲気は是非多くの方々に体感していただきたい。参加校や部員数が増えることはさることながら、来場者についても同じである。もし、読者がこの舞台に立ったことのあるOB・OGであるならば、知っている後輩が舞台にいなくとも演奏を聴けば若き日にタイムスリップするはずであり、懐かしさと同時に、後輩からパワーを受け取れるはずである。それが明日への活力になり、さらには音楽祭の発展につながるものだと信じてやまない。
 今年から、公式ホームページ(http://www.gm-ongakusai.org)が開設された。まだ発展途上と聞くが、開催日とプログラムは掲載されるようになった。私は、次回に向けてさらなる参加校と来場者が増えることを心から願い、また来年を楽しみにするのである。
(文責 甲南大学マンドリンギタークラブ OB 山下 晃生)

各校、賞の選考結果
《音楽祭大賞》
ギター部門

関西大倉中学高等学クラシックギタークラブ
「水の反映」 マンドニコ 作曲
マンドリン部門
帝塚山学園ギターマンドリンクラブ
「歌劇〈デモフォーン〉序曲」 ケルビーニ 作曲/金治耕造 編曲
《金賞》
京都府立北嵯峨高等学校クラシックギター部
「調和の霊感Op.3-8第1・3楽章」 ヴィヴァルディ作曲/北嵯峨高校クラシックギター部編曲
堺市立金岡南中学校ギター部
「花のワルツ」 チャイコフスキー 作曲
大阪成蹊女子高等学校ギターマンドリン部
「交響曲第2番作品36 第1楽章」 ベートーヴェン 作曲/平田昭浩 編曲
帝塚山学院中学校高等学校ギターマンドリン部
「恵まれた結婚」 マネンテ 作曲/中野二郎 編曲  
同志社女子中学高等学校マンドリンクラブ
「弦楽セレナーデ第2楽章第4楽章」 チャイコフスキー 作曲/小穴雄一 編曲
《銀賞》
大阪府立佐野高等学校ギター部
「ハープ協奏曲Op.4-6 第1楽章」 ヘンデル 作曲/篠原正志 編曲
兵庫県立西宮今津高等学校クラシックギター部
「80日間世界一周」 ヤング 作曲
「花のワルツ」 チャイコフスキー 作曲
桃山学院中学校高等学校クラシックギタークラブ 
「アディオス・ノニーノ」 ピアソラ 作曲/井上昌彦 編曲
奈良市立富雄南中学校ギター・マンドリン部
「海の組曲  第2楽章、第4楽章」 アマデイ 作曲
松蔭中学校・高等学校 器楽・弦楽部(マンドリン)
「序曲〈祖国への愛〉」 アモローソ 作曲

主催:全国中学校高等学校ギター・マンドリン連盟/一般社団法人日本マンドリン連盟
後援:毎日新聞社/大阪府/大阪府教育委員会/大阪市教育委員会/毎日放送
講評:石村隆行、岡本一郎、木下正紀、久保田孝、西垣正信
(五十音順・敬称略)

返信する

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です