今夏、ふたつのマンドリンコンクールの見所聴き所は?

平成25年度「全国高等学校ギター・マンドリン音楽コンクール」と第2回「全日本マンドリン合奏コンクール」

image1_01 今年の夏、正確には7月27日(土)に、第2回「全日本マンドリン合奏コンクール」が行われ、翌週すぐの7月29日(月)・30日(火)に「全国高等学校ギター・マンドリン音楽コンクール」が予定されている。全国規模のマンドリン・コンクールが2大会、大阪と東京でほぼ同時期に行われるというのは、とても楽しみだ。

 「全日本マンドリン合奏コンクール」は、昨2012年初開催されたコンクールで主催はNPO法人 ARTE MANDOLINISTICA(アルテ マンドリニスティカ)、後援には日本マンドリン連盟が名前を連ねている。
 一方、「全国高等学校ギター・マンドリン音楽コンクール」は全日本高等学校ギター・マンドリン音楽振興会と朝日新聞社が主催。これまで「全国高校ギター・マンドリンフェスティバル」としてきた歴史ある大会を「フェスティバル」ではなく、今年から「コンクール」へ“移行”したもので、HPでもその旨、告示された。

 両大会とも長年、マンドリン音楽の、とりわけマンドリン合奏の普及と振興に取り組んできているひとたちの総意でありシンボルとも言える大会で、この2大会を契機にさらにマンドリンの世界が盛り上がってほしいものだ。そこで両大会の特徴を眺めてみた。

 大会は、それぞれ、異なる点がいくつかある。

 「全国高等学校ギター・マンドリン音楽コンクール」は歴史あるフェスティバルを継承するもので、参加校数も多く、演奏される音楽は自由曲のみで継続してきた関係もあり、参加しやすく、かつ観覧する側からすればその時代の学生たちの「流行」もわかる、といった楽しみ方もある。ただ、課題曲がないぶん最終評価の点で難しい面もあったと思う。
 音楽は、コンクールとなれば総合的な芸術点で評する前に、譜読みや解釈、表現技術といった基礎的な部分の評価も欠かせないだろう。しかし、そこを重視しすぎるのはどうなのか? このへんの判断は、どんな楽器のどんなコンクールでもそうだが、主催者に委ねられる。そしてデリケートな難しさも残すもの。ひとつの解決策というか公平性の一助となるのは、審査員の評価を公開することだろう。
 今回「全国高等学校ギター・マンドリン音楽フェスティバル」が「同 コンクール」に移行するにあたっては採点方法を開示した。
———————–
2 審査方法
(1)審査員は1人 1 校10点満点で評価する。
(2)審査基準
努力:1,2,3,4
優良:5,6,7
優秀:8,9,10
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 これは、大英断といえるのではないだろうか。これまではS.A.Bの三段階方式だったのが10点満点に移行したのである。最終的には優劣で評価される。しかし、音楽の総合的な印象において1点差、2点差は、そのときの審査員の「印象差」である、と読み取ることができるようにも思う。

 こういうコンクールである、ということが結果としてこの大会をさらに大きく発展していく力になれば、と思う。

「全日本マンドリン合奏コンクール」は今年第2回。昨年の初回大会閉会時、主催側が毎年開催を宣言した。
 今年は課題曲を一般募集し、最終的に3作品が選ばれ、そのなかからどれかを任意に決め、自由曲とともに演奏する。予備審査は課題曲の録音物による。この応募締切は、2013年5月10日。これに残った団体が7月の本選に出場しステージ演奏によって競う。
 こちらは連盟的な大きな組織はないこともあるが、地方大会はなく、予選はすべて録音物による一般公募だ。地方大会に出場しなくてもよいということは、じつは地方大会が開かれない地域の団体にとっては朗報であるはずだ。この点が、この大会の大きな特徴にもなっている。第1回の参加校は、たしかにまだまだ少なかったと思う。しかし、東北、北海道の団体にも同一均一のチャンスがある。これは考えようによっては大きな魅力であると思う。
 今年はどんな高校生団体がどんな演奏を聴かせるのか? ふだん聴きたくても会場に行けない地域のマンドリンクラブの活動を同一ステージで体験することができるのは、この大会の大きな特徴となるだろう。

 なお、「全国高等学校ギター・マンドリン音楽コンクール」では、地域大会の有無による影響は、“振興会が認めた地方大会の推薦を得ていること、または振興会の録音審査を受けて承認を受けていること。”で出場できる、としている。これもひとつの方法だと思う。疑問を呈すればきりがない。地方大会で一発審査でジャッジされる場合と、繰り返しトライできる録音物でジャッジされる音楽が同じ土俵なのかどうか? と。逆に言えば、こうした疑問が出てきたら、それには明解に応える回答を開示すればよいと思う。

 と、ここまで見てきて、参加する立場、そしてマンドリンコンクールに感心があるいちマンドリン・ファンの立場から見て、素朴な疑問が2つわいた。

(1)課題曲がないコンクールでコンクールが成立するのか?
(2)「全国高等学校〜」が、「全日本マンドリン~」と「全国高等学校〜」で、同じ曲では参加できないようにしたのはなぜか?
 
 まず、課題曲の点。
「全国高等学校〜」の主催者である全日本高等学校ギター・マンドリン音楽振興会が目指してきたのは「高校生クラブの振興と健全育成、生徒たちの豊かな人間形成」である。これは、今後も継続すべきものだと思う。が、「当初の目的はほぼ達成された」としてコンクールに移行・・・。
 今、コンクールに移行する狙いがあいまいではないか。しかも「課題曲なし」。

 課題曲がないコンクールは、たしかにいくつか存在するし、参加者の底辺拡大につながり、これは意味ある判断だと思う。
 ただ、それは「底辺拡大」が重要テーマである場合では? 底辺=参加校は既にたいへんに多い。だから「当初の目的を達成した」という判断もでてきたのだろう。
 マンドリン、とくに高等学校マンドリンクラブを対象にしてきた大会が、「コンクールに移行する」理由は、当初の目的を達成したので次の段階にゆく、ということであろうから、それなら課題曲も設定すべきではなかったか? 
 一方、自由曲による参加というこれまで通りのスタイルが、この大会の特色でもあるとし、最善という判断もあると思う。このへんはコンクールとして回を重ねていく中で検討/改訂されていくべきものだろう。この大会を大切にし、大勢の知恵でよりよい道筋をつけていけばよいことだ、と思う。

 次に「同じ曲では参加できないようにした」点。
 高校生の参加する音楽コンクールで規模も歴史もあるのは合唱の世界。この世界を覗いてみるとふたつ、大きな大会がある。「全日本合唱コンクール」(社団法人全日本合唱連盟と朝日新聞社が主催し、毎年開催)と「NHK全国学校音楽コンクール」(NHK主催)だ。

 ともに古い歴史を持つ。とくにNHKのは、1932年(昭和7年)に行われた児童唱歌コンクール以来、第二次世界大戦による中断年を除くと、現在まで連綿と続く歴史ある全国規模の合唱コンクールだ(1962年(昭和37年)に現在のコンクール名に)。このコンクールにも、後発のコンクールを排他的に扱う規約はない。
 1948年、後発の朝日新聞と合唱連盟による「全日本合唱コンクール」規約は以下。
—————————
(課題曲・自由曲)
第16条 課題曲と自由曲の演奏は次のとおりとする。
 (1)課題曲は、全日本合唱連盟発行の当該年度合唱名曲シリ-ズから1曲を選択して全員で演奏しなければならない。
 (2)自由曲は、曲目・曲数に制限はない。
—————————
 合唱の世界では「全日本学生音楽コンクール」(毎日新聞社主催/後援:NHK)も規模が大きく、今年2013年度は第67回。この規約にもそのような表示はない。

ついでに吹奏楽コンクール関係の実施規定も調べてみた。参加をしばる自由曲の規約は、「指定された中から選ぶ」ということ、これはコンクールであるから主催の意図として当然だと思う。
 また、こうしたコンクール参加経験者は、たくさんのサンプルをとったわけではないが、いずれも「同一曲でいくつかのコンクールを受けていた」そうだ。
 ここで同一曲で受けてはいけない理由とはなんだろう? 評価が分かれた場合、困るから? 音楽コンクールでは基本的なことへの理解や表現が重視される。しかし、音楽は最終的にはインプレッションもものをいう。だから、審査員により評価が分かれる場合もある。これは仕方がない。ただし、トータルにはなるべく公平になるように主催者は審査員を選定する。これは当然のことだ。

 で、あれば、なにも同一作品がまな板に載せられても動じることはない、と思う。
 では理由は? 「他のコンクール等で演奏し、講評や審査、評価を受けたことがない」曲を選ばせる理由とはなんなのだろう? やや疑問が残る。

 一方、コンクールに出場しようとする団体が、定期演奏会なり、1曲しか演奏しないステージはあまりないだろう。得意な曲は複数あろう。それほど気にすることもない気もする。選曲の制限があっても大会に参加できないわけではない。異なる曲で、多様な顔を両大会を通じて見せてもらうことができたなら、マンドリン・ファンとしては、もっとうれしい。

 ・・・ともあれ両大会、こうした異なる点も含みながら、個人のレベルでも考える機会となり、かつ、意見を言い合う場となりながら、それぞれが特色のある大会として開催されることになると思う。参加する団体も会場に足を運ぶファンも合わせて、それがマンドリン世界を発展させていく力になっていくはずだ。このことこそ主催者の祈願であろう。
 そんな話題がたくさん散りばめられた大会が控えるのが今年の夏、ぜひ7月下旬は大阪に、東京に足を運んでみてほしいと思う。

「第2回全日本マンドリン合奏コンクール」
日程:2013年7月27日(土)
場所:昭和女子大学人見記念講堂
開催部門:学生団体部門/一般団体部門

「平成25年度 全国高等学校ギター・マンドリン音楽コンクール」
開催予定日:平成25年 7月29日(月)・30日(火)
開催場所:吹田市文化会館・メイシアター 大ホール

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