喝采。20年を改めて感じる公演。未来への夢、大きく。クボタ フィロマンドリーネン オルケスター第20回定期公演

(撮影:カエルカメラwithout ※=ebekaz)
 2月24日、クボタ フィロマンドリーネン オルケスターが、20回目の公演を行った。今回は、オケの20歳を記念し、また主宰者=久保田孝氏の70歳を記念して、テーマを「久保田孝傑作選」とした。プログラムはファン投票によるノミネート作品で構成、満場の客は、久保田作品の魅力を堪能し、心からの拍手でこの日を祝った。

 全体は3部構成。第1部は久保田氏の処女作「序曲第1番」。高校時代の作曲作品で、のちに管を含む版もあるが、当日は「管なし」で演奏された。颯爽とした序章から力強いコーダまで、トータルな印象は、ベートーベンの交響曲第一番! 若さと情熱がほとばしる。
 続いて「幻想曲第1番」「舞踊風組曲第2番」。ともに、1984年頃の作曲とのこと。どちらもソナタ形式を基調にしつつ、各モチーフがほんとうになんというか、かっこよい。ことに「舞踊風組曲第2番」は、歴史に残る傑作!と太鼓判を押したい。
piano2 第2部は「ピアノとマンドリンオーケストラの為の幻想曲」。管とピアノが加わり、編成/ステージ・レイアウトが大きく変わった。ピアノに夏川由紀乃。1976年、久保田氏33歳の作品。演奏時間も20分強と長め。チャイコフスキー、グリーグ、ワグナーといった名曲、作曲家へのあこがれ、尊敬が垣間見えながら描かれる、壮大なクボタ・オーケストレーションを満喫できる作品。これを生演奏で聴けたのは、ほんとうにラッキーだ。久保田孝という音楽家にクラシックの歴史と奥行きを感じることができる作品だろう。
 そして第3部で3作品。最初は「序曲第2番(管なし)」。オリジナルでは管が加わるが、マンドリン属とギターによる編成版。第1番と同様、高校生時代の作品。この初期両作品とも、マンドリンのトレモロの素晴らしさ、その特徴の活かし方が実に巧みに織り込まれているように聞こえる。当時は大学系マンドリンクラブも全盛期。イタリア作品や邦人作品も盛んに演奏された時代だったはずだが、その中で、マンドリンの特質、いや本質をつかみ、音符にしていたことに、改めて感嘆する。
italia 「奇想曲イタリア」は井坂 恵をオリジナルのメゾソプラノとする1991年の作品。この日も井坂さんが参加した。「Iタランテラ、IIシチリアーナIII独唱入りIVタランテラの再現」(解説による)で構成される。なんといってもこの独唱が、際立つ作品だ。III〜IVの流れは、アンコールでも演奏されたが、文字通り叙情的かつ哀愁を帯びたメロディーにのせて、故郷への想いが切々と歌われる。久保田孝という作曲家の耽美的な側面が浮き上がる。
baire 最後に「舞踊風組曲第3番」(1987年作)。マンドリンアンサンブルがよく鳴る主題を持つ舞曲から始まり、合計4つの舞曲が展開する豊かな楽想を持つ作品。華やかな印象で本編を締めくくった。

万雷の鳴りやまない拍手に応えて登場し直した久保田さんは、アンコールとして「奇想曲イタリア」から「III独唱入り〜IVタランテラの再現部」を演奏。むせるような情感が、再び会場を満たし、たたみかけるコーダで、興奮を呼び覚ます。
続いて「舞踊風組曲第3番」から前半部分を演奏。第1舞曲に続いてすぐに展開する第2舞曲のフラメンコのリズムに合わせ、ダンサーが登場し華麗なステップで、花を添えた。
再び万雷の喝采。そして「舞踊風組曲第2番」の流麗な後半部。プログラムの「もっと聴きたい!」を満足させるクボタ・フィロらしい「もてなし」をたっぷり感じさせる演出だった。

 20年という時間の感覚は人それぞれだ。いちばん一般的な例は、人の成長だろうか。昔の成人式(元服)は、正式/正確には年齢制限はないが、概ね16歳、近世は18歳、そして今は二十歳。生まれたての赤ちゃんが成人するまでの時間。たしかに長い。本人にすれば、とても長い。幼児期〜小中高校〜大学または社会に出ていく。
 一方、親からみると、20歳で一人前の顔をしてるように見えて、実のところその外見に、生まれた頃のイメージがダブり、なんともはや、たかが20年である。されど20年。二重三重では足りない、幾層もの様々な記憶が重なるものだろう。
 クボタ・フィロマンドリーネン・オルケスターの20年はどのようなものだったか? 久保田孝氏ご本人は、両方の思いでこの日を迎えたはずである。そして、オケには同じ思いでこの20年を並走してきたメンバーが複数いる。公演を聴いただけでは計り知れないはずの20年だが、この公演はそれを、美しい音楽に昇華させて、見事に花咲かせた。
2013-02-25 04.26.22
第20回定期演奏会「久保田孝 傑作選」
http://www.philomandoline.com/concert.html#20th
2013年2月24日
東京・紀尾井ホール
午後2時開演
指揮:久保田孝 演奏:クボタ・フィロマンドリーネン・オルケスター

第1部
序曲第1番(管なし)
幻想曲第1番
舞踊風組曲第2番
第2部
ピアノとマンドリンオーケストラの為の幻想曲(ピアノ:夏川由紀乃)
第3部
序曲第2番(管なし)
奇想曲イタリア(メゾソプラノ:井坂 恵)
舞踊風組曲第3番

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