ギターの時間|gtnjkn

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マンドリン演奏会報告

語り合うマンドリン〜柴田高明&クリスティアン・ライアー マンドリンデュオリサイタル

[flagallery gid=24 skin=photo_blog_demo name=Gallery](8/5 東京・やなか音楽ホール/撮影、文:かえるカメラ)

 昨年発表したCD「クロニクル」に続き、今年6月フル・CDアルバム「sky blue flower」を発表。この発売を記念したリサイタルが静岡、東京、広島、京都で行われた。
 「sky blue flower」は、マンドリンのデュオ演奏によるアルバム。柴田高明とライアー氏とはドイツ留学時代に師匠のすすめで組んだのが最初。在学中はもちろんのこと、卒業後もドイツ各地で演奏、日本でも公演を行った。今ツアーは久々のデュオ・ステージとなった。東京公演を取材した。
 楽器はマンドリン2台、ときにライアー氏がマンドラを弾く。二人が響かせる音の陰影はとても豊かで温かい。柴田の音色は、初めて聴いたとき、これはマンドリンではない! と思うくらい芯のある丸さを持ちハートフルで、「マンドリンの音色」という概念を広げた。ライアー氏の音はその音に、さらに深いぬくもりを感じる。
 マンドリンの音色は金属弦の復弦をピックで弾いて鳴らしたとき生じるハーモニクスそのものを活かさなければ、「音楽の音」にはならない。「余韻が少ない」とか「硬質である」ことは特性の一つであるけど、二人の音色は、マンドリンにはもっと重要な要素がある、と、教えてくれる。

 もうひとつふたりの演奏から感じるのは、「低音域が少なめ」ということがマンドリンデュオにあってじつはハンディではない、ということ。実際には「低音がないなあ」と感じさせてしまう、そのことに意識が向かってしまう音楽のほうが多いかもしれない。しかし、ふたりの音楽では起伏がゆたかで、そのへんに意識が向かない。これも、倍音を含む根本的な楽器の鳴らし方にヒントがあるように思える。
 ふたりの音楽は、そのままふたりの対話だ。後日、ふたりにインタビューした。そのときのふたりのドイツ語による会話がまたじつに音楽的だった! そのままふたりの音楽の森を散策しているような。
 単体の、トレモロによるメロディー楽器としてのマンドリンの魅力はすでに定着しているといってよいと思う。しかしマンドリンの魅力のもう一つは、ピアノとオーケストラ(バイオリン)によって反映を極めたロマン派音楽とは異なるバロック期と現代にある。マンドリンとマンドリン音楽の深さ、面白さ、魅力が、そこに凝縮している。そんなことを確信させた。

柴田高明とクリスティアン・ライアー

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