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インタビュー マンドリンインタビュー

本番直前!クボタフィロ最終リハーサル現場から。本番は2/19日、今度の日曜二時から

本番をあと数日に控えたクボタフィロマンドリーネンオルケスターのリハーサル会場に潜入。久保田孝さんにチャイコフスキーとの出会いについて聞いた。それは、そのまま今年の第19回定期演奏会の聴き所であり魅力だと思う。しかも、今公演はマンドリン音楽の方向を示唆するものになるのではないだろうか。(photo:kaerucamera)

プロレスからAlwaysクラシックへ

ーー最初に久保田先生のクラシック音楽との出会いを教えてください。

久保田:小学校の頃です。わたしの親父が、じつはときどき大きな買い物をしてきてしまうひとで、ある日ステレオを買ってきました。それからは友人やなんかが集まって熱心に聴いたりするようになりました。その頃からですかね。
 当時は町の電気屋さんの前で大勢でプロレスを観戦したり、ということがありましたね。

ーー 近所に鈴木オートというのがありませんでしたか? 映画「三丁目の夕日」に出てくる・・

久保田:それはなかったんですが同じ時代ですね。後ろの方は縁台を出してきて内輪片手に(笑)。それ以前、電蓄時代もありましたが、おやじは詩吟が好きで。そういうものがありました。始まりはSPの時代ですが、LPになりステレオになり、中学〜高校になってそうしたものがより身近になり・・・。それからですね。作品ではやはりベートーベンから。スコアを買ってきてわくわくしながら聴きました。ドボルザークとか。

ーーチャイコフスキーもその頃ですか?

久保田:チャイコフスキーを聴いたのはもう少しあとからです。ただ、その頃(1960年前後)以降ロシア民謡はよく聴かれるようになってきていましたね。歌声喫茶ができたりしてブームといってよかったと思います。僕は歌いませんでしたが、ロシア民謡、ロシアの旋律と歌には惹かれました。

ーー古典派の音楽から入ってチャイコフスキーに出会ったときの感想を教えてください。当時はキラ星のように名指揮者も大勢いたのではなかったでしょうか?

久保田:ロシアの音楽はロマンティックで訴えてくるものがありますね。よく覚えているのは「悲愴」です。
 当時はトスカニーニもフルトベングラーも聴きましたが、ブルーノ・ワルターが多かったと思います。ジョージ・セルが評判だった時期もありましたね。アンセルメはスイスロマンド管弦楽団を連れて来日した時、かぶり付きで聴いたのを覚えています。ムラビンスキーはその後、留学中にウィーンで聴いた事があり、とても感動したので、サインをもらいに行きました。そしたら一人ずつ控室に招き入れて、低いテーブルを挟んで向かい合って腰掛け「サインをお願いします」とパンフレットを差し出すと、私の目を見てからサインをして、パンフレットを手渡してくれました。紳士的でとても感じが良かったので、そのパンフレットは大切に保存しています。
 あと、中学生の頃、感動を受けて何度も繰り返し聴いた「新世界」のレコードの指揮者は、イシュト・ヴァン・ケルテスでしたね。
 それから偶然出会ったバラライカのオシポフ・バラライカ・オーケストラ The Ossipov Balalaika Orchestra のレコードを繰り返し繰り返し聴いてましたね(笑)大学に入ってからですが。もう、何回も何回も聴きました。

バラライカから教わったロシア音楽の極意?

ーーオシポフのレパートリーにはチャイコフスキーもあったんですか?

久保田:というわけではありません。が、チャイコフスキーを聴いたとき、とくに5番とか6番を聴くとロシアの舞曲が出てくるんです。逆にバラライカを聴いていると、「あ、これは5番の何楽章のあの部分にでてくる!」というふうに結びつきが見えてきました。アマデイの「北欧のスケッチ」も聴いていると、あ、これはロシア舞曲のあのへんが元になっているな、それによって作曲されているな、ということがわかる。そうやってより惹かれるようになりました。

ーーバラライカは楽器も音楽も民衆(農民)の中から生まれたと思うんですが、それに比べチャイコフスキーは生前から地位もあり、認められていた。しかしそうやって民衆の土着のメロディーやリズムを大切にしたのかと思うと、ロシア音楽の懐の深さみたいなものを感じます。ただ、チャイコフスキーはそれだけに洗練されすぎていないかな?という気もするのです。「ロミオとジュリエット」にしても、これは名曲だから当たり前かもしれないけど、すごくかっこいいですよね。
「ロミオとジュリエット」リハーサルから(部分)

久保田:この曲は僕がオケとは別にやっている久保田音楽教室〜KMAの最初の頃の発表会で模範演奏として聴いてもらおうと取り上げたのが最初でした。作品として気に入っていたので、とりあげたんですが、けっこう長い作品ですけど、編曲に取りかかったら短時間で書き上げることができました。で、マンドリン・オーケストラで音を出したら、バイオリン・オケとは異なる素晴らしい世界を描けたと思いました。「マンドリンならではのオーケストラサウンドが作れる!」ということを確信した作品で、このことは今もクボタフィロマンドリーネンの鍵になっているところです。

ーーバラライカと親戚のようなマンドリンが、洗練しすぎない肌合いと言うか風合いに、すごく合うと個人的にも感じます。トレモロの肌触りは、荒さも繊細さもバイオリン・アンサンブルとは異なる存在感ですよね。

久保田:KMAは今年27回目なので、それの3回目か4回目のときだから、もう20数年前なんですが。

ーーこの作品の難しいところは段階によっていろんな面があると思うんですが、私の耳には99%くらいOKなのに、今日のリハでは団員さん側から弾き方、トレモロの回数の疑問が出てきていましたよね? あれはどういうことですか?

久保田:うん。あれはアンサンブルがうまく行くようになりテンポが上がってきたことによって4分音符6回と決めていたところが弾きにくい、合わせずらくなってきたんです。そこで、それを5回にしようということにしました。テンポが上がらなければそのまま合っていた部分です。今まで話題にもならなかったんですよ。テンポが上がって演奏技術的にも高度になってきたとき、アンサンブルでどのように解決するかは、そのときそのとき決めていきます。

*この日、この取材の後、オケはさらにプログラムにそってリハーサルを繰り返した。想定外の難所を生み出すくらい高度な高見にきている「ロミオとジュリエット」をはじめ、クボタフィロマンドリーネン・オーケストラの描くチャイコフスキーは、マンドリン・アンサンブルとロシアの音楽との相性を追求し尽くしているといってよいのではないか。久保田孝氏のオシポフを含むロシアの音楽家たちとの長く深い交流を経て行き着いたチャイコフスキー。それがこの定期演奏会で披露される。どのバイオリン・オケにも負けない「チャイコフスキーの真髄」を聴かせてくれそうだ。

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【チケット】
全席指定。チケットの予約間もなく終了。クボタフィロホームページ・チケット予約フォームまで
SS席5000円 S席3500円 A席3000円  B席2500円

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