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マンドリン演奏会報告

マンドリンクラブ「エレガンス」華麗なステージの粋

 3月4月大震災の影響を受け、全国各地の各種公演は自粛しがちだった。が、5月、そしてさらに6月は、一年以上前から計画された予定通りのものも多かったと思うが、毎週各地でマンドリンコンサートが相次いでいる。各公演はあえて、「震災復興支援」を掲げてはいない場合も多い。が、おそらくどの会場でも義援金の募金が行われているようだ。「あれから3ヶ月」。この期間は、「もう3ヶ月」であり「いまだ3ヶ月」である。被災地はもちろんだが、各地で緊張と戦いが続いている。
 それだけに、それぞれの公演決行には、主催者たち、参加者たちのさまざまな思いが込められているだろう。
 そんないくつもの公演から6月4日津田沼駅前の習志野文化ホールで行われたマンドリンクラブ「エレガンス」の公演を報告したい。

 今公演は同団体の第30回定期演奏会にあたる。エレガンスの結成はその第1回公演の5年前。35年の歴史を持つ。メンバーは全員女性。創設以後、山内俊比古氏、さらにカラーチェの全曲集(全9巻1985年音楽の友社より出版)を編纂したことでも著名な日比野利道氏の指導により、安定した高い実力を身につけ、地元に根ざした活動を続けてきた。活動方針や活動領域を評価され、県の「芸術文化振興基金助成事業」にも認定されている。このあたりが動員力を裏付けるのか? ちなみに日比野 俊道の著作全9巻は、精選された全3巻として現在も入手可能。
 現在はそのあとを継いだ田久保 裕一氏が指導。音楽的により磨きがかかっている。
 
 さて、当日習志野文化ホールには開演2時間前からぽつりぽつりと人が集まり始めた。その数が尋常ではない。開場直前、受付前は長蛇の列。それも割合というかかなり年齢層の高いご婦人、紳士たちが多い。後で聞くと千葉〜津田沼あたりは文化的に昔から音楽が盛んで愛好家も多い。マンドリンに縁のない人も「音楽会」として大勢集まる、というのだ。どんなコンサートでも、というわけには行かないだろう。長年継続蓄積してきた音楽クオリティへの信頼と「楽しめる」コンサートを演出し演じてきた実績がこれだけの人を集めるのだろう。

 たしかにプログラムがまた練られていたと思う。マンドリン合奏の薫りをふんだんに盛り込み、さらにマンドリン・ソロの良さも伝えたい! とゲストに呼ばれたのは井上泰信氏。この翌々週には自身の組織するARTETOKYO公演を控えながら、この日は第2部で3作品を演奏、ソリストに徹した。曲も楽壇から指定されたもの。弾き慣れているはずとはいえ、演奏の振幅〜スケールはとてつもなく大きい。そしてまたなんと! 音がいい。きれい。広い会場によく通る。つやつやと、ときにはささやきであるにもかかわらず会場の隅々まで音が届く。ほんの少しPAによる増幅もあったのかもしれないが、リハーサルの生音からはその必要性をほとんど感じさせなかった。マンドリンだからこそのおもしろさが発揮される作品が並んだ。

 第3部カルメン組曲はクボタフィロの純器楽編も記憶に残る名演だったが、「声」が入ることで、また次元の異なる音楽世界が展開する。そしてボーカルとマンドリン合奏のからみ、妙味は印象が深い。しかもこのカルメンでは、団員があらすじを文章で拾いだしそれをナレーションしてストーリーを追いながら各曲を聴くという趣向に仕上げた。これが、ハマっていた。わかりやすく、曲の解説にもなりしかも飽きさせない。
 あくまでマンドリンが主役の公演のなかに、どれだけ異なる要素を取り込むか? 難しくも楽しい思案の要素だと思う。が、こうした仕掛けを、おそらくは大変な作業であろうけど、この団体は、どうも楽しんでいる。それが押し付けがましくなくサラリと伝わってくるところが、粋だ。ステージの風景もエレガンスだが、その気持ちのありようがエレガンスだ、と思う。ちなみにそのナレーションは、ステージ全体の進行役も務めた田部美枝さん。地元出身のフリーアナウンサー。

見事にまとまったステージだった。

 同団体のホームページには、この公演終了後「無事終演いたしました。ご来場頂きました皆様 ありがとうございます。」と一文のみの簡潔な挨拶が掲載されている。地域では、有名な団体なのだろうから、それでよい。とする考え方もあるだろう。でもそれだけ? ううむ、やっぱりそれだけで終われないのだ。見て聞いてしまったのだ。こういう団体は、またまだギターの時間未踏の地域にたくさんあるに違いない。マンドリン文化は、深い。もっと情報を! とりあえずは、この公演を動画に編集する予定。ぜひお楽しみに!!

エレガンス第30回定期演奏会
6月5日(日)14:00 開演  
千葉県習志野市 習志野文化ホール/入場料 全指定席 1,000 円
指揮:田久保 裕一
【プログラム】
第1部
喜歌劇「愛の悪戯」第1幻想曲 
組曲「ナポリの風景」(クロッタ)
 
第2部(マンドリン独奏:井上泰信)
ナポリ狂詩曲(カラーチェ)  
チャルダッシュ(モンティ)  
序奏とロンド・カプリチオーソ(サン=サーンス)

第3部(アルト:立川かずさ)
オペラ「カルメン」ハイライト(ビゼー)

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