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キラ星のような音楽。ギター二重奏コンサート 岩永善信 & 酒井康雄

キラ星のような音楽。ギター二重奏コンサート 岩永善信 & 酒井康雄

 全国各地で晴天かつ猛暑だった今年の七夕。その数日前、6/28(金)東京・日暮里サニーホールと7/2(火)名古屋・HITOMIホールでクラシックギタリストの名手二人によるギター二重奏コンサートが行われた。
 ともにパリ・エコール・ノルマル音楽院で学んだ経験を持つ二人。日本国内では一昨年共演して以来のステージとなる。
 今回のプログラムはデュオによるバッハ、ジュリアーニ。それに、プティ、ビゼーが聴き所。ソロで演奏された作品もそうだが、岩永さんが演奏するプログラムは、ほぼすべて岩永善信さんの手が入るオリジナル・アレンジによる。そして今回のハイライト、かつステージ毎に新しく紹介されるロマン派作品の〈全曲もの〉は、川潟誠氏編曲によるもの。驚愕の右手フィンガリングとデジタル処理しているのか?という精度で指板を踊る左手の動きは、ときに〈聴き所〉に優る見どころだ。

 バッハはお二人ともに10絃ギターで登場。岩永さんのギターはロマニリョス、酒井さんは加納木霊。バッハ音楽の通奏低音に7,8,9,10絃は欠かせないと思う。こうした演奏を聴いていると、6弦ギターによるバッハは、リュート的な音階の愉悦は伝わるが、宮廷や教会的な〈響き〉を連想させにくいと思う。名人、達人のバッハでもギター演奏となると、納得がいく演奏は、少ないのだ。多絃ギターで聴くと、「フランス組曲」の華やいだ空気をむせるように感じる。こういうバッハが好きだ。

 転じてジュリアーニは作曲者がギター奏者としても名を成していたといわれる娘エミリアと共演するために作曲されたという作品。両パートとも高度な演奏力が要求されそうだが、呼応するフレージングが対話のようだ。2本のギター演奏ということを越える、この瞬間が醍醐味だ。

 2台の器楽演奏による「古典」に背筋がのびたところで、酒井さんは6弦ギターに持ち替えソルの作品。続いて岩永さんもソロでファリャ。深いクラシック・ギターのトーンを堪能した。

 プティは、岩永さんも学んだナディア・ブーランジェの門下生でもある。年齢はずっと上。パリ音楽院、パリ・エコール・ノルマルで教鞭を執り、エコール・ノルマルでは学長も務めた、というから、岩永、酒井両氏にとっても師匠にあたる。「タランテラ」は、20世紀最高のギターデュオと言われるプレスティ=ラゴヤのためにプティが残した傑作2作品のうちのひとつだ。
 名手のための作品といっても、難解高度な技術を要する音楽ではなく、むしろ洒落て軽快。フランスの香りに満ちた作品。この芳香の表現は、技術とは別の音楽センスがものを言うところだろう。素敵な作品を教えてもらった。

 「アルルの女」は劇附随音楽。そこから第1組曲、第2組曲が組まれている。今回は第2の全曲。メヌエットやファランドールは誰の耳にも馴染んだ作品。それも管弦楽の響きで記憶している。これをギター2本で? コーダ前、ファランドールの全奏に会場一体となって首をふりふり手に汗しながら聴き入っていた。聴き終えるとしばしの喝采。これはすごかった。呆然とした。目の前をいましがた響いていた音が星になってキラキラしているような・・・。

 ロマン派音楽をギターで。というのは岩永さんのギター音楽の骨格のひとつ。今、この現代で、とくにギター界でこうした活動を続けているのは岩永善信氏唯一無二であると思う。ギター音楽演奏の可能性は、まだまだ無限だ。(撮影:かえるカメラ)

【今後のスケジュール】
11月9日(土) ザ・フェニックスホール(大阪市) 19時開演
11月16日(土) 宗次ホール(名古屋市) 1830開演
12月1日(日)ハクジュホール(東京・渋谷)14時開演 
 予定プログラム:
 ロッシーニ「セビリアの理髪師」序曲:岩永善信 編曲
 JSバッハ リュート組曲第一番 BWV996
 Dスカルラッティ 3つのソナタ 他